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喫茶店

8.喫茶店


 辺りを眺めながら二人で歩く内に、苑内にある美術館の前に来た。それに併設されて、小奇麗な喫茶店があった。が、私達はどちらにも入らず、車に戻って早めにホテルへ行く事にした。


 そばの道を歩きながら、周りを芝生に囲まれた喫茶店は居心地が良さそうで、大きなガラス窓を通して中部が良く見えた。空いていて、三人の中年の女が一つテーブルでお茶をしながら、おしゃべりをしている。様子は活気があり如何にも楽しげだが、一人が四十代で、二人は五十代かーーー? 


 私達みたいな年寄りは、目がかすみ耳が遠いように思われ勝ちだが、案外地獄耳と称する便利なものがある。これは歳を取れば取るほど発達する機能で、仮に百米離れていてもはっきり話し声が聞きとれる。店内に入らなくても耳を澄ますと、三人の女達のおしゃべりが聞こえて来た:


A女:何よ、さっきの年寄り連れは! どの展示品の前でも、私らの邪魔ばかりしてさ!

B女:そうよね!「兜がどうとか」時々見当はずれな感想を大きな声で言ってたわ。

C女:声が大ききのは、耳が遠いせいよ。

B女:案外教養も足りないのね。歴史を知らなくてーーー、要するに無知なのよ。


C女:展示品の説明書を読めないのか、老眼鏡をしょっちゅうずらせて読むんだから! 読んでも、どうせ直ぐ忘れるくせに、無駄だと言いたいわ。

B女:そうよ、そうよ。

C女:他人( ひと)の事を考えずに、何時までも展示品の正面から離れないのよね。「どきなさい!」というのも可哀想だから、それとなく人が込み合ってる振りをして、ハンドバッグで体を押してやっても気付かないのよ! 鈍感ったら、ありゃしない! 


A女:押しても気が付かないんだから、困るわねえ、ああいう自己中は!

C女:仕方ないから、今度は秘密兵器のお尻を使ってぐいと押してやったら、直ぐ隣にいる奥さんがジロリと睨むんだから。あの意地の悪そうな目付きったらーーー、夜中にうなされるよ。


B女:暇な年寄りのくせに、何もわざわざ日曜日を選んで混み合う観光地にやって来る事ないじゃないの! 普段の空いてる日に来りゃ好いのに、こっちは迷惑よ。

C女:日曜日に来る年寄りは、罰として入場料をニ倍にするアイデアはどうかしら?


A女: そうよね。私ら上役から嫌味を言われながら、土日を挟んでやっとこさこしらえた三日の休暇だのにねえ。楽しみを邪魔して欲しくないわ。

C女:言葉からすると、どうも私らと同じ関西方面から来た見たいだけど、車かしら?

B女: 案外、上等の車じゃないの? ひょっとしたら、私らの「軽」とはひと桁違うのかもよーーー。


A女:さっきの展示品の前でもそうだけれど、年寄りは高速道路でもモタモタするから迷惑よ。何せ80Kmの交通規則をきっちり守り過ぎるんだよね。命より規則の方が大事みたい。しかも、こっちが追い抜こうとすると、いきなり車線を変更したりするから、危ないったらありゃしない!

C女:後ろに付くのは危ないわ。ひょっとしたら、バックしてくるかも知れないよ。

B女:高速道の逆走っていうやつね。クワバラ、クワバラ!




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