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第一人者

 話が脱線するが:企業の経営は易しいと人は思うのだろうか、それとも難しいと思うだろうか。創立20年後の存続率が0.3%と聞けば難しく見える。が、無駄遣いをせず、貯金をしながら、一件一件を大切に扱うのが基本だと言えば易しく響くし、それに「アイツがやれるのなら」オレにもやれそうに見える。


 創立以来三十数年やって来た道のりを振り返って、正直な気持ちとして「経営はとても難しい・ストレスの塊だ」というのが、筆者の本音である。誰にでも出来る、とは到底思えない。


 先に、経営に「絶対的な正解は無い」と言ったが、難しさは実はここにある。「正解が無い」のは、言い換えれば自分で正解を探し出さないといけない訳で、時には「正解を発明」しないといけない。誰かが正解を教えてくれる訳ではないから、創造力も要るし勇気も要る。例えば、先のTさんである。「伝票を発行するだけでも大変ですやろ」の意見へまともに耳を傾けておれば、ウチはとっくに潰れていたろう。


 同時に、その「難しい」という本音と並行して不思議な事とは思うが、筆者には「難しさ」を必ず乗り切れるという自信が何時も意識にあった。今もある。何かを決断する時に基本的に迷いが起きなかったし、芯がブレるという事はなかった。これは決して勝手な厚かましい思い込みではなくて、根拠の無いものでもないと思う:


 危機に遭遇し(仮に失敗して)、最後に「たった一人になり・お金も無くなり」会社がスッカラカンの振出しに戻ったとしても、「自分には(人並み優れた)セールスの腕がある」という気持ちが何時も腹の底にあった。決して大学で学んだ工学知識や語学力ではない。過去に達成したトップセールスの体験と学び取ったコツは、身に浸みついたもので色あせることが無いし、体から逃げてゆくものでもない。これが経営において判断と決断に盤石の自信を与えてくれた。

 頼るのは自分のたった腕一本でよいから、その意味で、筆者には助けが要らず幾つになっても金儲けは易しい。


 体験から若い人にアドバイス出来る一言があるとすれば、どんな分野であれ、どの場所であれ、「(任された仕事で)第一人者になりなさい」という事。中途半端はだめ。これが間違いの無い成功の秘訣と思う。

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