円周率みたいなもの
2.円周率みたいなもの
次に二番目の「連れ回り防止ワシャ」(=ボルト頭が連れ回りしないワシャ)の原理:これは先の原理と少し異なる。
ナットを締め付けた時に物理学で広く知られたもう一つの公式がある。これは(学者によって)数学的に導かれたものだが、ナットを回して締め付けた時に、床面は幾らの力で押し付けられるか、という理論である。この際話を単純化する為に、通常のワシャは何処にも介在しないものとする。
商売柄ウチの者なら知っているが、「トルク→軸力」の換算式である。一般の人は覚えても得にならないが、超簡単な公式:
T=KxWxd 或いは、W=T/(Kxd) と表される。
T:ナットの締付けトルク(=ナットを回す回転力)
d :ボルト径
W :ボルトの締付け軸力、即ちナットが床面を「押し付ける力」。
K :「ナット下面と床面(座面)がこすれ合う摩擦係数」及び「ナットめねじ部とボルトのおねじ部が こすれ合う摩擦係数」から、計算される物理定数である。
この物理定数を、仮にネジ面と床面の両方の摩擦係数が「同じ」値μと仮定して、計算すると(ここに計算式は示さないが):
例えば:摩擦係数(ツルツル度合い)μ=0.05の時(鉄と鉄面同士の接触で、高級な潤滑がなされてとても滑らかな場合)に、 定数K=0.079 となる。
μ=0.1の場合(普通の機械油の場合) K=0.14
μ=0.2の場合(油が無く表面がドライでややざらついている場合)K=0.26
K値は円周率みたいなもので申請書類にも記載した。本書には以後忘れた頃にもう一度K値が出てくる(先に書いたように、の言葉を伴って)が、それまでは取合えず忘れてくれてよい。




