急所を突いた
「でも、どうして新しい発想が出てくるのかしらねーーー不思議よ。発明って、そんなに簡単なの?」
「うんにゃ、ただ新しいのを先ず一つ作り上げると、出来上がった新しい世界に飛び込んだ気分になる」
「ーーーー」
「その新世界に浸って辺りを眺め回わすと、物の見方も新しくなるんだよ。ほら、海に飛び込んでみたら、陸では見えなかった新しい世界が見えるじゃないか?」
「ふ~んーーー?」
「陸に居ては不可能だけれど、海の中に入ると赤い魚を見つけるのは簡単。赤いのが見つかったら、次に黄色い魚を見つけるのは大した事じゃないよ、その次は緑色。何せ同じ海の中の世界だからね。アイデアを次々見つけるというけれど、勝手に見つかるんだ、大した事じゃない」
「ふ~んーーー? 貴方って案外哲学的なのね」
「ネジの業界は、賢い人が少なくて哲学が遅れているのさ」
「発明よりも、この世界で貴女みたいに謎と魅力に満ちた女性を見つける方が、遥かに難しいさ」
「アハハ、上手ねえ。好きになりそうーーー。でも、貴方は発明を楽しんでるみたいよ」
「うん、仕事の合間に楽しんでいるから、退屈に苦しまなくて済むよ。土日もやっているから隣近所で怪しまれている:あのご主人盆正月も無しに年中無休よ、よっぽど事業が上手く行かないのかしらーーー」
「貴方は、風車の組み立てに使えると言ったけれど、沢山建っている風車のねじの連れ回り防止に、入れ替えてコレを使うのは無理なんじゃないの?」
「ーーーー?」
「だって、建ってしまったものを壊して、今更ネジを全部入れ替えられないもの」
頭の良い女は、急所の突き方が鋭い。
「そうだねえーーー、新築の場合に限るよなーーーやっぱり」
「ーーーー」
「そんな事より、一緒がいいよ、いつかデートしないかい。中を覗いて減量の具合をチエックして上げるから」 ジムの他の男達に後れを取りたくなかった。
(★ここに女の子二人の黒いシルエットがあります)
(出所:リンテック社広告から拝借)




