鉄壁の壁
ただ、(全て市販のワシャを使っての実験だったが)どちらかと言えば外径が大きいものの方が小さいものよりは、ワシャが連れ回りしにくい。とは言え、100%連れ回らない訳ではなかった。結局、ワシャーが「連れ回るか回らないか」の原因はさっぱり分からず、分からない事は何度実験しても、揺ぎ無く正解で有り続けた。
鉄壁に見える壁にぶち当たって、自分はもっと控えめな目標を持つべきだと考え直した。謙虚な態度に徹する事にした処、実験は三つの事を教えて呉れた:
①お前は非常に根気のある人間だ。もし若ければ、将来必ずや大成功するに違いない事。
②次に、ワシャーが「回るか・回らないか」は、ほんの「僅かで・微妙な差」で起きるに違いない事。僅かな差ならば、誰にでも原因を発見するのは「易しい」筈だのにーーー、
③それが分からないのは、誰も気づかない「超細部」に原因が「隠れんぼ」しているに違いないーーー。鬼さんコチラである。
その細部とは、ひょっとすると、油が一滴余分に付着していたからか、それともワシャの表面の髪の毛ほどの傷の有無によるのか、それとも空気中の微細なダストの咬み込みか。あるいは周辺の気温の変化のせいではないかと疑った。というのも同じ条件で午前中のテストと午後からのテストで結果が違ったからだ。
ついには、地球の自転の方向に疑いを向け、正しいテストには南極まで出かけるべきかと密かに計画した。




