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恐竜時代に哺乳類

 辞めた二つ目の理由は:上役と「ウマが合わなかった」為。他方で「ウマを合わせる事(=人間関係)」が出世の必要条件ならば、自分は最も向いていない人間だと、悟ったからである。

 当時はまだ日経の「私の履歴書」を一度も読んだ事は無かったけれども、そこに書かれている「出世する法=人間関係」を、人生の早い時期に探り当てて見切りを付けた。若造のくせに、この点だけは賢しいものだ。


 面接で選抜してくれたS専務は私を気に入ってくれたみたいだったが、私とS専務の間に介在するA課長とH部長が問題であった。「肌が合わない」と日頃からこっちは感じていた。人というのは、こっちが嫌だと感じると、相手も99%こっちに対してそう感じているもので、いつか悪意ある復讐を受ける。


 お正月になれば同僚らはA課長宅へ年賀の挨拶に赴いていた。ゴルフ好きなS部長の歓心を買う為に、同僚らはゴルフを練習し、そして部長のおごりでコースを回らせて貰った。I君は部長に結婚の仲人をお願いした。M君はS部長と雑談が上手かった。


 私はとなると、一度も年賀に上役の家を訪問したことが無かった。ゴルフもやらなかったし、雑談も下手。社内結婚だったから、上役のA課長が私へ「仲人をやってやろう」と当然の顔で持ち掛けた時、「済みませんーーー、親爺の我儘でもう他の人に決まっているものですから」と丁寧に辞退した。


 「可愛げのないヤツ」と思われて当然である。けれども、私は好きでもないゴルフをやりたくなかったし、年始の挨拶に行って歯の浮くようなお世辞をよう言わなかった。威張る積りでこれを書いているのではない。多分私は極端な潔癖症なのだと思う。ゴルフや年賀で下心を持って伺うのは、品位の無いやり方と思ったからだ。


ところがA課長もH部長も共通して、年賀とゴルフと可愛げのある部下が大好きで、それ以外は嫌いと考えるタイプだった。私が他へ転属する可能性が無かったから、上役二人が関所のごとく構えて居る限り私が「芽を出すチャンス」は無い。恐竜時代に哺乳類にチャンスが無かったのと同じである。だから辞めた。


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