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百までは生きられない
5.百までは生きられない
一方デパートの食品売り場でも時を同じくして、事件が起きていた:
たった一人の「通」なる買い手が、紀州方面の「日高小町」によって、あえなく撃沈されたのを夢にも知らない。逆に、一層の戦線拡大を図ったのである。
勢いに乗って更に売れると見込んだ仕入れ係は、あろうことか「高知産物フェア」を開催したのである。大量のウルメを含めて、軽トラ一杯分の干物を高知から総動員した。これが大きな誤算になったのは、語るも愚か、笑うも涙。
殆どが売れ残った高知フェア開催直後から、ウルメの売上げが激減どころか、パーフェクトに皆無となった。
大量に積み上がったウルメの売れ残りを眺めて、天変地異にも似た怪奇現象に、仕入れ係は一体何を思ったろうか? これが若い彼の出世と婚約に悪影響を与えたのは間違いないから、憂慮しつつ私は深く反省するのである。
かくして、ウルメ戦争は双方の痛み分けで終戦を迎えた。アレ以来時々売り場に寄ってみるが、もう一年になるのに高知のウルメは一度だって並べられた形跡がない。ウルメは、デパートの鬼門になった。 あれから一年、終戦記念日の今日も冷凍庫から取り出して、私は1本を食べた。取り過ぎた塩気にやられて、百までは生きられないかも知れない。
完
2019.4.6改訂
比呂よし




