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◎第六十六話:「カブト虫」の話
「カブト虫」の話
1.孫
孫こそ可愛いやーーー、と世間の年寄りの多くがそうなるようだが、私の場合は案外そうではない。
自分の情愛が薄いせいかとも思うが、孫にそれほど執着を感じない。無論憎んでいる訳ではないが、自分自身の事で絶えず手が一杯だから、そちらまで気が回らないせいかもしれない。それとも自分が神戸に住んでいて、横浜市に居る孫たちと地理的に離れている為もあろうか。
二人の孫は上が小六の女の子で、下が小二の男の子である。仲が良いらしく姉が権力を発揮することは無い。男の子はクラスイチのチビだが走るのは一番だそうだ。
女の子は字が上手な上書くのが好きで、「ジイジ・バアバへ」で始まる手紙を定期的に呉れる。その度に、こちらも几帳面に返事を返しているのだが、もうかれこれ何年も二人に会ってはいない。




