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頭が酷く回転した

3.私の答えは:

「私の低い心拍数は刺激を受けなければ低いままだが、一旦刺激を受けると急速に上昇し、上昇ぶりは「平均の人」の場合を上回る。これは先のグラフが示した通りである。ここが重要。結果として(私は決して頭は良くはないが)平均の人よりも、臓器や脳へ酸素が沢山行き渡り「活性化」されるのだろうと思う。


この時体が「超人へ変化する」とまでは言わないが、頭の回転がにわかに良くなり「先が読める」人間へと変化する。


 先が読めたら、成功するのは難しくはない。一般の言葉で言えば「先見の明」であるが、それが強い自信を生み出す。自信は(平均的な人なら感じる)不安感を解消し、(これから行う自分の行動に対して)実行機能が並みはずれて強化されるのは自然である。


 実際、「実行機能」のスコアが「平均的な人」より遥かに跳ね上がっているのは、これも先のグラフが示した通りで、私の論理とデータとの間に矛盾がない」 これが私の答えである。さらに、以下のAとBの二例を挙げて、それを証明する事が出来ると思う;


(Aのケース)

 第一例として、先の失業中の私のドイツ行きを取り上げる。「平均的な人」から見れば「成功率1%の無謀な冒険・理解できない」と映ったかも知れない:


 けれども心拍数を上げて活性化された頭でよくよく考えれば、これは決して無謀ではない:日本は経済大国である(当時も)から、世界的に大きな市場と言える。海外企業がそこへ商売を進出させるのは大きな成功を約束されているようなもの。だからこそ(上手く誘えば)日本へ進出するようにドイツの会社を(こっちがイチ個人と言えども)説得は可能な筈であるーーー、と私は「当時考えた」。


 ひるがえって、当時の私は(失業中とは言え)直前まで業界のトップセールスマンとして腕を鳴らした。「一緒にやろうぜ」とこっちが持ちかけた合弁会社の成功は、「よう売るかどうか」の一点に掛っている。よく売りさえすれば、資金が無くても経営がヘタクソであっても、会社というのは成功するものだ。


 日本の業界を熟知しているトップセールスマンなら、それだけで「よう売る」事の証明だし、他人を説得する技術は(客観的に考えて)人並み以上な筈だ。何故なら、トップになれているのだから。ならばーーー、磨き抜かれたセールストークで、ドイツ人を説得できない筈はあるまいーーー、と私は計算した。論理的な思考だと思う。


 これらの要素を一つ一つ吟味して評価するなら、ドイツへ訪問する前から私の「成功率は90%以上であり、決して1%なんかの賭けではない」と分かるのではあるまいか? 事実当時この通りに説明したら、頭の良い配偶者が全く反対しなかった。

 こんな風に分析して見せたら、「平均的な人」は「ああ、なるほど」と納得してくれるに違いない。全員とまで言わなくても、何人かの人は賛同してくれる筈と思う。


 とは言っても、無論不安が無くはない。けれども本人に「見通し」と「強い自信」が本当にあるなら、不安感は払拭されてしまう。だから失業中のドイツ訪問の実行は、(少々突飛だとしても)自然な行為の内に入ってしまい、つまり、決してリスクに賭けた「賭け」ではなく、むしろ合理的な計算ではあるまいか。


「お前は変わり者」と母親に言われたのは、実は何も変わってはおらず、相手に分かるように私がいちいち細かく思考の「合理性」を説明しなかったからに、過ぎない。


 ただ、「平均的な人」は思考の中で、世界市場における日本の経済規模にまで頭を巡らせて、(ドイツ行きの)冒険の可否を考えないかもしれない。そこまで私が考えを巡らせ得たのは、やはり「心拍数の増加で頭が酷く回転した」せいだろう、と思う。


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