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共同声明の発表

 仕方無さのついでに思い付いて、「ねえ君、セールスマンになって、これを売ってみないかい? 億単位で儲かるよ」と(女が住居するマンションのローンを念頭に置いて)提案してみた。再々度女がギクリとした。こっちの提案が女には想定外のそとほかで、山の上でタコに出逢ったようなもの。目をパチクリさせた。


 女はそれに即答する代わりに暫く考えて、「これって、おもちゃ屋に売れるの?」と訊いたから、製鉄所に売れるとばかり考えていたこっちには、質問が想定外のそとで、思わずギクリとした。途端に、話の主導権を再度女に奪われた。


 その後は、ヒーリング(癒し)式ヨガ教室と、生徒集めのテクと、おもちゃ屋とオネジとメネジとセールスマンを混ぜ合わせた複雑な話合いが繰り広げられた。かって無かったほど協議は混とんとした世界になった。双方の関係は一層親密化したにも関わらず、考えは互いにバラバラ事件となったのである。


 二人は互いに人類だと言う以外に共通点が全くなく、お互いギクリとする場面がおびただしい数にのぼった。場所は教会ではなかったから、混乱が誓約書のサインや呪文を一つ唱えて消える訳ではない。事前に想定していたのに、「食べたらホテルへ行こう」というわくわくする共同声明の発表までにはついに至らず、代わりに「食べたら食べっぱなしにしよう」という無責任な結果になった。


 それでも二人は気楽にくつろげたから、炭酸水の泡がはじけるようにピチピチした若いのより、どこやら少しひなびて退廃感のある女の雰囲気を、私は好ましいと思った。

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