年齢を秤(はかり)に掛ける
けれども、初回のデートで露骨にホテルのベッドを話合いの場に指定するのは、誤解を招くし如何にも品が無い。
止む無く代わりに、「完全な独立ではなくて、本業を別に持って貴女のプロジェクトを副業にしてみてはどうかーーー」と助け船を出した。一気に進もうとする女の失敗のリスクが高いと思ったから、そんな冒険を遠回しに諫めたのである。
平凡だが最も健全なアイデアと私は思ったが、女が浮かぬ顔を作った。女は遠回しの道のりを近道で考えようとした。これを眺めて、そうだったーーー、女は顔面打撲と離婚を決行する勇気あるタイプだったのを思い出した。ここは威張る風でもなくむしろ人のいい笑顔で応対すべきだと考え直して、もっと女の立場に添ったアイデアを「にこやか」に提案した:
「貴女は美人で、しかも独身だ。それを武器にお金持ちと再婚して、その男に出資させるアイデアも悪くはないかなーーー。男の力を借りるんだよ」
これを聞くや女はもう一度ギクリとして、こっちの顔をマジマジと見返した。瞬間、私は女の心の奥底を正確に言い当てたと直感した。無論こっちは、眺められて鑑賞に耐える顔ではない:
「僕は配偶者がいるから再婚の候補として駄目だけれどねーーー、アハハ」と、赤くなりながら慌てて打ち消した。
これがシャイな印象を与えたのか、女は「キャハハのキャ・キャッ!」と笑って、椅子から転げ落ちそうになった。この時の破裂したみたいな女の笑いは、一体どう解釈すべきか。今思い直しても謎で気味が悪い。
私に言わせれば事業に成功したければ、見込みのない手段をあれこれ迷うべきではない。それに、五十という自身の年齢も秤に掛けないといけないと思うのだがーーー。こっちは腕利きの企業人の端くれ。何時も、現実とお金と合理性と邪悪性の四つをこき混ぜて考える。




