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あり得な~い!

 小さい頃からバレーボールの選手で、スポーツマンだった事・生まれは埼玉で・大学卒業時に実業団から誘われたけれど断った経緯・神戸の人と結婚してからバレーは止めた。


 その後地区のママさんバレーに参加する機会があったが、女のスパイク(=強打の打ち込み)が激しかったせいで対戦チームが酷い突き指をしたり、代わりに顔面で受けて打撲された顔がオムレツになる事態を招いたーーー。そういう粗暴な体験談を打ち明けて、女は私を怖がらせた。チャンスはじっくり待つ事にした。


 相手を見て手加減しなくてはならない試合は面白くないから、ついにママさんチームも辞めて、バレーボールから完全に引退したとの事。序の事に夫との夫婦関係もまとめてお仕舞にした。スポーツ音痴のお父さんは、女の話へ「ふ~ん」とか「ヘエッ!」とか、木琴を叩くみたいに古風な音調で感心した。


 楽しい会話が未だ終わらない内に、シャトルバスが20分ばかりで否応なく到着したレストランは、フランス料理店。

 時刻が一時近くになっていたが、フォーマルな服装の若いカップル達が、変に静かに音も立てずに食べていた。どの客も食べ方が遠慮がちで妙に黙りこくっていたから、毒でも入っているのかしらーーーと気になった。それでも、ほぼ満席の洒落た店である。


 100%若い人ばかりの周りを見渡して、何か後ろめたい気持ちになった。それにしても私達二名を除いて、他のペア達には年齢のアンバランスが無いーーーというのは正直すぎて、私の目からみれば不自然である。世の中には不倫がもっと流行っていいはずだ。


 食べながら、「僕たち、不倫関係に見えるかな」と女へカマを掛けてみたら、「あり得な~い♪ 父と娘でしょ!」と軽くいなされて死ぬほどガッカリした。こんな場合の女は、思想が貧しいと言うべきか、無慈悲というべきか。


 料理が出てくる度に、女はスマホでせっせと写真を撮るのに忙しい。孫たちに見せるのだと言ったから、こうなっては如何に思想が豊かなこっちも、関係をめいっぱい深める事は諦めないといけない。老若に拘わらず女の幸せは愛される事にある、と殺し文句を使う予定だったのを、思い直して止めた。バイアグラを持ち出そうものなら、ママさんバレーみたいに顔面総打撲となりかねない。




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