狡猾な易者
次回のジムで私がエアロバイクをやっていると、遺伝子の多様性を求めて予想通りに女の方から寄って来た:
「あら、こんにちは」
「みいみさんだね、元気にしているかい?」と、声掛けの冒頭に相手の名前を持ってくるのは下心のある証拠。
「ええ、私は何時も元気印よ」
「バツイチーーーかな?」と、これは当てずっぽう。
「ーーーー」
こっちはどんな環境下でも対応力がある。
「そりゃ、判るさ。魅力的な人は大概バツイチだもんなーーー」と、使うのは殺し文句。ここも(持てない男は)真似れば良い。
バツイチ女というのは、今の時代になっても心の隅で少しコンプレックスがある。だから「バツイチ=(イコール)魅力的」という一見チグハグで意味が正反対の単語を組み合わされると、意外性に目をパチクリさせる。次の瞬間、女は大喜びする。
「アハハ、そうよ。分かるの!?」と、女は胸を張ってバツイチを積極的に認めた。
「貴女は何時もイキイキしている。外の人と違うのはひと目でわかるよ」
「ウフフーーー」と、気持ちよくなった女は含み笑いで肯定した。もうこっちのペースだ。
因みにここで、女の反応が「いいえ、夫が居るわ」なんて答えても、プロはまごつかない。
「ヘエッ、とても信じられない! こんな女性を、よく外の男が放って置くものだ。きっと、誘惑が多いんだろうねーーーー夫の気苦労が分かるよ」
これで中年女はますます気持ちよくなる。
「若い人でも「私は死んでますーーー」と看板に書いているみたいな人が多いのに、貴女は例外だ。縦から見ても横から見ても魅力的だ。何か秘訣でもあるのかい?」
探りを入れつつ相手に解答を預けるから、易者はもっぱら狡猾専門だ。こうまで言われて、打ち解けない女は世界中にいない。




