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遺伝子の多様性

 先の通り、エアロバイクを漕いでる時にたまたま前を通りかかったから、声を掛けたのだが、女には最大の受難事件だ。

「新顔じゃないの? 何時このジムへ来たの?」が、私の声の掛けはじめ。

「そんなに最近じゃないわ、もう3ケ月になるかしらーーー」

「ふ~ん。背が高いんだねえ。身長は?」

「167センチよ」


「前々から眺めていたんだけれど(これはウソ)、貴女は「いい人」だね」

「いい人ーーー?」

「ああ、貴女はとても「いい人」だ。外の人とは違うから」

「あら、それってーーー、どうして区別が分かるの?」

「伊達に歳はとってないよ。ひと目見れば分かるさ」

「他の人と、私のどこが違うのーーー?」


「他の人とは少し出来が違う人間だと、貴女は自分でそう思っているでしょう? ねえ、そうじゃない?」と、やんわり図星を突いた。

「ーーーー」 黙って、「当りよ」という顔をした。


 誰でも殆どの人が内心では、良かれ悪しかれ「自分は他の人と違うーーー」と思っているものだ。走りが早いとか、料理が上手だとか、赤面症だとか、人よりのろまで泥臭いとか。要するに個性だから、個性は誰にでもある。


 だから、「他の人と少し違う人間だ、と思っているでしょう?」と指摘されると、当たり前の事を言ってやっただけなのに、「この易者は良く当たる!」と当人は勘違いする。こうして圧倒的優位に立ち状況が一変する。


 易者は巧みにたたみ掛ける:

「だったら、何処が違うか僕に訊かなくても、違いを自身でよく分かっているのじゃないの?」と、相手に回答を預ける。

「ーーーー? 貴方って、面白い事を言うわね」

 周りに人が居たから、初回はここで二人は離れたが、女がこっちへ強い関心を寄せたのは明らかだ。


 男の目線でそう書いたけれども、女の目線に立つと「この男は、数ある女の中から自分を選んで声を掛けた」と思い、従って「勇気があり、他の男連中とは違うんだわ」と錯覚する。さらに「やっぱり、自分は男に持てるんだ」とプライドもくすぐられるから、女は一種の好ましさを男へ感じて警戒感を解く。


 卵子は数が少なく貴重で、だから男を慎重に選り好みするのが女の顕著な特徴だ。遺伝子の多様性(=即ち、自分と毛色の違った人格)を積極的に求めるのは、進化生物学の教える処で、これは純粋に科学上の問題である。文学的に言えば、男はセックスに持ちこもうと頑張るが、女は男に愛を求める。

      


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