感謝している
6.感謝している
ウチの商売に限って観れば、人口減少だけでなくビジネスの国際化がある。国内の多くの工場が海外移転するのも、これまた時代の流れ。人口減と大工場数の減少、此処が一番のポイントだが、そんな中にあって会社の将来はどうなるか、である。
変革すべき時が近づいていて、きちんと向き合う必要があると考えている。
ウチの商売の根幹である「大径ボルトの締結」の需要が日本の市場から日増しに失われて行くのは容易に察しが付く。皆無にならないとしても絶対数が減るから、商談があれば同業者間で奪い合いになり、冒頭のような高い利益率は取れなくなって行くだろう。また大型ボルト締結の作業数も減るから、締結工具を買うよりもレンタルで済ます事がますます多くなるのも、読めそうだ。
会社という今のブランコは一見順調に揺れ動いているように見えるが、かっての造船工業と同じで、ウチは斜陽産業の道を歩みつつある。今の最高の利益も、衰退への一里塚、めでたくもありめでたくも無し、か。何もしなければ、ブランコはいつの日か停止となる。
(非正規を採らないから)社員の増加にウチが慎重になるのは、将来にそんな見通しがあるからで、私以上に頭の切れる私の配偶者も、同じ事を考えているようだ。
先に紹介したSAKIワシャは、気違いじみた熱心さで小径(=大径ではなく)ボルト向けに最近開発したオリジナリテイ。緩まないからメンテの手間も時間も減るから、工場や装置に使えば生産性の向上に貢献し、時代の変化に則していると思う。
たくさん売れると信じている。宇宙ロケットにも使えるだろうし、ウチにとって飛躍のチャンスになるかも知れない。開発は先見の明があったからではなく、たまたま偶然の結果の重なりなのだが、運も実力の内ーーーと何時か書いたかな?
この販売は販売店への大量卸となる。ウチが最も得意としている価格の高い物を一つ一つ売る成功体験が反って「邪魔になる」わけで、未経験な分野である。製品分野が違い過ぎるから、未経験どころか水と油みたいで混じり合う事が無い。かといって、現今の営業員たちを首にすることも出来ないから、どう上手く会社が変身して行けるか模索している。
この問題をクリア出来れば、生産性の高さを維持しながら、さらにプラスして人も増やして行ける事になろうかと考えている。人口減も工場減もマイナスと捉えず、反対に「人生すべて当たりくじ」(塙氏:イトーヨーカ堂)と前向きに捉えて行きたいものだ。
辞めた事務員は「本人の不徳の致す処だった」に違いないのだが、字も上手だったしとても美人だっだ。その意味で、密かに残念に思わないでもない。ただ、辞めた事が私に会社の将来と行く末をじっくり考えさせる切っ掛けを与えてくれた。その意味で、感謝している。
完
2019.7.21




