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後見人

7.後見人

 大学を出てから、転職もあったりで神戸を離れて私はあちこちに住んだ。神戸から遠隔の高知市へ住んだこともあった。


 親戚づきあいは殆どなかった。岡山で法事などがあっても、出席するのは私の母であって、孫である私が呼ばれる事はなかった。第二の故郷( ふるさと)という気持ちが何時も心の何処かにあったから、私は岡山の人達に再会したいと思った事は何度かあるが、そんな機会は訪れなかった。若い時代とは案外そんなものなんだろう。


 あれやこれやがありながら、それぞれに忙しく、人生はあっと言う間である。試しにあっと言ってみたら、小六から60年が経っていたのである。


 近年になって、泰子おばさん夫婦がたった一人の娘を突然失って以後、後見人の話に関係して、私は時々二人に会うようになった。九十を過ぎた夫君の体調もよいとは言えない。何とは無しに二人が、親戚の中で甥に当たる私を頼りとするようになった。私が会社を経営しているのも、しっかりした人間と見られたのだろうか。年が十一違うが、この頃から「泰子さん」と私は呼ぶようになった。やっちゃんと呼ぶのは、やっぱりおかしいから。


 私の今の歳になれば、良く知っていた身の回りの親戚の人達も死に絶える。仕方のない事だ。そうなっても「泰子お姉さん」の目からから見れば、私が何時まで経っても「若造の甥っ子」と見えるようだ。親戚中を見渡して、後見人を頼むとすれば私以外に人は居ないと思い込んだのである。


 客観的に見て私以外に人が居ないのは確かだが、それでもーーー私は後見人になるのを丁寧に断った。




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