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◎第六十三話:「やっちゃん」の話
◎第六十三話:「やっちゃん」の話
1.泰子さん
岡山市に住む泰子さんは、私の叔母で今年88だから私より11上である。私の母の妹にあたる。「叔母さん」とは言わず、「泰子さん」と呼んでいる。
若い時からおきゃんで、大人になってもストレートにずけずけした物言いをするから、親戚には嫌う人も多いが、飾り気の無いそんな性格を好きだという他人もいる。泰子さんは、三人兄弟の末っ子。本当は四人だったが一人は子供の時分に死んだ。長女である私の母とは八つも歳が離れていたが「姉・妹」の仲は良かったようだ。母はもう数年前に死んだ。
泰子さんの姉(=私の母)や兄が親の言うなりに見合い結婚だったのに、泰子さん一人は勝気で自由な性格に似合って、当時としては珍しく恋愛結婚をした。後日聞いた話ではダンスホールで知り合ったそうだから、時代背景からして二人とも充分不良だったのは間違いない。




