女が絡む
++++序での事に、世界の果てにあると聞く理想郷シャングリラに隣接する「美女の国」でもいい。出来たら、掛け値なしに味が良いと聞く火星人の女も、試したかったーーー。
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5.女が絡む
遣り残したことは数多いが仕方あるまい、遅かれ早かれ人は死ぬのだから諦めが肝心と、男らしく覚悟を決めた。最後のエネルギーを振り絞って遺書を書くより先に、身辺の数冊のエロ雑誌をゴミ箱へ処分し、ネットで採りためた性ホルモンの画像もPCから一括削除した。人生最後の微調整が完了すると、ひと安心で、死後私の名誉が損なわれる心配は無い。
何か名残を惜しむような、流石にしみじみとした気持になったら、涙の代わりに不覚にもよだれが出た。腕はサイボーグではないから、筋肉が麻痺してきて既に死の硬直が始まっている。手を動かすさえ重労働でけだるく、やっとの思いで手を伸ばし、枕元の電気スタンドを消した。
消すと真っ暗闇だから開けても閉じても同じようなものだが、習慣で目をつぶったら、ありありと死ぬ夢を見た。隕石が落下して来て、直撃される夢だったからドキマギした。世の皆様、さようならーーー。「私のお墓の前で♪」泣かないで下さい。
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次の朝、思った通りちゃんと死んでいたから、やっぱり目が覚めなかった。ついに、一巻の終わりであるーーー。ところが、どっこい、七時半になって、配偶者が布団を乱暴にはぐった。七つ若いが、年寄りのくせに腕力のある女で容赦がない:
「会社に遅れるじゃないのっ! 早く起きなさい!」
女が絡むと、なかなか上手く死ねないものだ。隕石もコースが外れて直撃しなかったらしい。
完
次の話へつづきます




