サイボーグ
中二の女の子が一人いると聞いたから、「四十三・バツイチ・子持ちコンブ」という長いあだ名を付けやった。女の語る処によれば:「四十三辺りのバツイチ女にとって、世のスポーツクラブは誘惑と危険に満ちた邪悪な環境で、不埒なバクテリアがひしめいている」のだそうである。「男は有害で、結婚はもうこりごり」と言う。余程痛めつけられたのだろうか。
バイアグラの助けを借りて、こっちは未だ充分男の内だから有害なバクテリアの一種ではあるが、幸い彼女は私に気を許している。一夜干しの安全な男の干物くらいに考えているからだ。歳を取ると、「女に警戒されない」というメリットは大きい。
昼間は介護の仕事をやっているが、夜は地区のママさんバレーのキャプテン。立ち姿はスラリと高く、お尻も丸みがあって適度に出ているから、見るだけでどんなバクテリアでもワクワクして、感染したくなる。触ったら、触られた本人よりも触った方が感動してドッキーンとなるけれども、何処かのシマウマみたいにお尻を撫ぜられる位で後足で蹴ったりはしない。
女は食べ物に弱いが、この女も例外ではない。苦心してやっと食事へ誘いだして、夕食兼用のデートが実現した。よもやま話の序でに白内障の手術を報告したら、「両眼がサイボーグになったのね。永遠の命だなんて、人類の夢よ、素敵!」と、本気かどうか疑わしい励まし方をしてくれた。