◎第六十二話:「女が絡むと不便」な話
以前に書いた話ですが、書き直したので再投稿します。
◎第六十二話:「女が絡むと不便」な話
1.手術
歳を取ると、「便利」な夢と「不便」な夢の二つを見る。先ず便利な一つ目:
七十を過ぎて眼がかすみ出したので、危機感を募らせて病院の眼科へ行った。運悪く品の悪い中年の女医に当たり、「貴方は、ど近眼な上に、白内障で御座います」と言われた。口が悪いのか丁寧なのか、判断に迷った。
これを真に受け、最近両眼に白内障の手術を受けた。目玉をくり抜く時に、ポンと陽気な音でもするかと思っていたが、あにはからんや期待通りには行かず、音無しで愛想無し。こうして、古池みたいに濁った目を、透明なアクリル樹脂に入替えた。
口は悪いが手術が上手だった女医によれば、アクリル樹脂は水族館で同じく使われている透明度の高いガラス樹脂の一種で、鮫の肛門まで見えるそうだ。これで両眼はアンタが死ぬまで、いや正確に言えば、当人の「寿命より長持ち」する事になった。
確かに鮫の肛門以外でも、何もかもが澄み切って良く見えるようになった。これからは何を見ようかと、楽しみにしている。




