ドリスデイ
8.ドリスデイ
未だある。M36と簡単に言ったが、同じボルト径3.6センチでありながら、ネジ部分(=ギザギザの部分)の種類が実を言えばJIS規格で4種類もあるのだ:ギザの粗いもの(並目ネジという)と、ギザの目が詰まったもの(=細目ネジという)と、それらの中間の物があるからだ。
これに加えて輸出も考えるなら(「採算を取る」為に、当初からそれを念頭に置いている)、M36近辺で言えば1.5インチ(=直径が3.85センチ)のサイズになるが、それとても同じように並目・細目がある。だから合わせてM36近辺だけで、違った8種類が存在するわけになる。
まだまだある。ボルトの種類はM36ひとつでなく、M30とかM80とかM100とかーーー、それらの並目・細目・インチサイズを合わせると、トヨタの車種の数なんて比ではない、ボルトの種類は、M100以下だけの範囲に限っても、160種類を下らない! トヨタの社長なら、卒倒する程の種類の豊富さ。が、多いからといって、種類を半分に統合するなんで出来ない。
値付けを下げる為にそれぞれを100ケづつ作るなら、160種類x100ケ=16,000ケ。1ケの原価が仮に平均で2万円だとして(=100ケづつ作っても達成が難しい謙虚な原価だが)3億2千万円である(=この数字は再度出て来る予定にしているから、覚えておいてほしい)。
話半分としても、(売れるかどうか見極める前に)約2億円分を遅かれ早かれ在庫として「作りだめ」しないといけない事になる。言ったかなーーー?ウチの資本金は1千万円。同じ会社が新たに20~30ケ作れる勘定になる。
発狂しそうになったが、再度この世に踏みとどまった。
発狂する問題を、どうやって解決するかーーーー。そもそもこの方程式に解は存在するのか?
これは(貧乏人は)「手を出すな!」と言われたのと同じ。ここまでの見通しを持って初めて、先のロジック(=量産の意味)が心底「分かっているよ!」と言える。これは、特許品テンションナットの「先行きの困難さ」が並大抵ではない、のを暗示している。エライ事に手を出したものだーーー。正直な今の気持ちである。
けれども、「人に責任をなすり付ける」以外にも、私には更に幾つか特技がある:例えば、嫌な事から目をつぶったり、つぶれない場合は目を背けるやり方だ。今回も「背ける」事にしたから、大して心配をしていない。ドリスデイの英語の歌がある:「ケ・セラ・セラーーー♪」(なるように成る♪)




