パワハラもやる
6.パワハラもやる
測定法の問題は解決しても、理想的な「斜面の角度θ°」を探る実験は大事である。暇さえあれば、暇つぶしに実験を繰り返した。憑かれたようにそればかり考えていて、社員が相談事で私の机のそばへ来て声を掛けられ、ハッと現実世界へ戻る事が何度かあった:「なんだって!? すまないが、もう一度言ってくれかな」
社員はじっと私の目を覗き込んで、疑わし気な顔をする。私も年を重ねた歳だから、ソウ見られても仕方がないが、「ソウ」とはどういう意味かなんて訊かないで貰いたい。恐ろしくてとてもお答えのしようが無いから。
寄って来たのがたまたま配偶者である場合には、「ヒーチャンッ!」と叫んで定規でバシッと机をやるから、飛び上がるほど驚いて心筋梗塞を起こしそうなる。こっちの小遣いを値切るだけでなく、パワハラもやる女だ。
理想の斜面の角度θ°を探る為に何の根拠も無かったが、取り合えず「失敗した試作品の半分の角度にしよう」とヒラメイた。普通の人なら、(半分ではなく)試作の10%レスの角度から徐々に試そうと、小出しでしみったれて考える。半分という思い切った発想とハキハキした声は、タスマニアの肉と日本製精力剤マカ王の利き目に拠るところが大きい。
先ず半分の角度にして上手くゆけば、正解の本当の角度は当初の角度と半分の角度の「中間にある」のが分かる。しかし、もし半分の角度にしても未だダメ(=緩む)なら、その次には「その更に半分」にする。これを繰り返して追い詰めれば、「京」が無くても「やがて」求める理想の斜面の角度に行き着くであろう。




