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困難な道のり

2.困難な道のり

 さて、フォークを握りしめて駆け出すなど、読者諸兄の好意的な期待が間違った方向へ過熱してもいけないと思う。この為用心して予め少し「水を差して」置きたい: 

 特許を取ったーーーと聞くと、「大したもんだ」と人は感動するかもしれない。けれども、それは物事の結果でもないし終点でもないのである。


 まず特許というのは、原理が「論理的で・新規」に見えさえすれば、取得出来る。実態のないアイデアだけであってもよい。それが人の役に立とうが立つまいが、また仮に実物が存在しなくてもよいし、作ってみたら動かなかったーーーでも構わないのである。原理がウソッパチであっても(明確にウソだと証明されない限り) 犯人として検挙される気遣いは無い。


 だから残念ながら、余りエライ訳ではない。ただ、私が書くと何でもエラク見えるのは困ったもので、身に備わった徳と善行のせいかとは思うがーーー、こればかりは今さらどうしようもない。

 今回、完成した現物無しに殆どアイデアだけで特許を申請した。だから先の通り終点ではなく、実態から言えば申請した時点で「入口に立った」だけといった処。


 けれども会社の場合には、「入口に立った」だけでは済まない。「緩まない原理」を、「実用化」(=実際に使えるように製品化する)しないといけないからだ。以下に詳しく書くが、これが易しい仕事ではない。配偶者に言わせれば、元々が「ウソ」だのに、それを「マコト」に百八十度変身させるようなものだから難しい。が、仮にそこまで無事に出来たとしても未だ道半ばで、その先が実に「エライコト!」になるのだ。


 なぜなら、会社だから次のステップとしてソレを売らなければならない。ここが辛い処。何故なら販売というのは元々難しい仕事で、「どうやって売るか?」である。読者諸兄だって直ぐには答えられまい。製品が出来ても、売れなければ絵に描いた餅で話にならない。


 まだある:売った結果として、ここが肝心だが、しっかり「儲けて」初めて「特許が有効」だったと胸を張れる。

 特許が辿るこれからの困難な長い道のりを考えると、途中で極度の貧困に陥り行倒れとなる人もいるに違いない。同じ発明でも、そこが企業人であって学者と違う処。


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