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手土産(2)

「安」という漢字も良く使った: 何という意味か当てさせるが、正解を当てる人はいない:

「ホラ、ウ冠(=屋根の下)、つまり「家の中」に「女」が居る。妻がちゃんと在宅している訳だから、彼女が外で他の男と浮気していないーーー、なによりの証拠になるじゃないの? 夫はとても安心さ。だから漢字の意味はComfortable (= 心地よい・気が安らぐ)の意味だよ」


 「ナルホド、実に男の心理を突いている」と、説明を受けた男達はしきりに感心して日本の文化を尊敬する。が、あにはからんや、女は又一筋縄では行かない:

「先ほどから聞いていると、どうもカンジというのは男達が主役で、自分達に都合の良いように男が創作したもののようね」と、看破する。こうして何千年もの漢字の尊い歴史の裏舞台が、一瞬にして暴かれたりするのだ。


 序でだから、最後に面白い漢字を紹介しよう:「馬」・「又」・「虫」という文字と意味を色紙に書いて教えて、これら三つを組み合わせた「騒」の漢字の意味をクイズにした。ホラ!字をご覧よ、馬のマタの下にチョウチョが迷い込んいる。現実にそうなったら、こそばゆいかな、いや、それとも気持ちが良いかなーーー?と少々エッチを混ぜてからかう。


 興味津々となって周りは、一所懸命に考える:

「驚いた馬は前足を上げて棒立ちになり、暴走するから大騒ぎだろうよ。だから意味はDisturb(=騒動を引き起こす)の意味」のカンジだと教えると、笑わない人は居ない。


 お前の話を聞いて、何故日本人が賢いのか理由が初めて分かったよ、と「日本人尊敬論」に貢献したことが再三である。当たり前の日常の漢字が、向こうでは愉快なユーモアに変化する。コミック風に「風が吹けば桶屋が儲かる」※の話を紹介したこともあったし、幼い子供が居ると事前に聞いた時には、おもちゃの知恵の輪をポケットに忍ばせた。

(※参考までに: 大風が吹くと道にほこりが舞う→盲目めくらになる人が増える→昔、盲目の人の職業は「三味線弾き」になる以外に無かった→結果として、三味線メーカーが忙しくなる→三味線には猫の皮を使うから(日本文化)→猫が殺されて生息数が減る→家内でネズミが増加→ネズミは木をかじる→昔、日本のバケツ(=桶)は木で出来ていたから、かじられて壊れる→桶を注文する→桶屋が繁盛して→「桶屋が儲かる」)


 そんな風に用意した幾つかのジョーク・折り紙・漢字の話・桶屋の話・知恵の輪ーーーと手持ちがあれば、日本文化の紹介が途切れる事が無い。ユーモアの男・日本文化に造詣の深い・教養のある紳士と思われた(=ソウ思わせるように演出した)。

 横メシしながら立派に外交が果たせ、場の主役になれるし、結果的に後の商売が上手く展開する。自分の天性に存在しない「社交性」を、このように「技術開発して」身に付けたのである。


 たまたま同じ場に日本人が居合わせて、周りを笑わせる私をながめて、XXXさんはジョークが上手で「流石だ」なんて言う人が時々いた。これは見当はずれなお褒めで、なに、苦労して「準備したもの」である。海外の人と付き合ったり一緒にビジネスを展開する時、ユーモアやジョークのセンスは、プロとして必要な道具の一つと考えている。


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