二通りの選択
3.二通りの選択
それはともかく、相手のお宅に招かれる場合、こっちが一人に対して、対手は家族を含めて複数。黙っているというだけで一種の反逆罪になるから、それなりに気の利いたお喋りをしないといけない。
元々私は非社交的な人間だが、それを理由に「ご招待という好意」を断る訳にはゆかず、「口下手だから迷惑」と逃げてもおれない。しかも横メシ(=横文字をしゃべりながら食事をする事)しながらと来るから、頭の中で英単語を探っていると、料理は砂を噛むような味になる。
因みに、たかが人付き合いに「何もそんなに大袈裟に考えなくても」と思う向きもあるだろう。生まれつきそういう人柄の人は幸せで、羨ましい。対人関係が上手で社交的な性格の人ならセールスでも成功出来るし、「ご招待」は苦になるどころか、反って良い機会として楽しめる。一種の才能だと思う。が、不幸にして私は違った。
何事に拠らずここが大事な処と思うが、そんな才能にも性格にも恵まれない時、人はどうするだろうか? 選択肢は二通りしかない。「自分には到底出来ない」と諦めるか、それとも出来る方法を模索して「技術として」身につけるかである。
私は後者に属する。決してスマートではなく、技術を身に付ける為に泥臭くムシムシ努力するタイプ。見るところ、世の大部分の人は前者。大なり小なり、そんな前者か後者かの二者択一のチョイスが人生には幾度も無数にある。一つ一つの選択が小さくても、生涯に重ねると大きな違いを創るように思う。




