背負い投げ一本
②
ケケケケ、この新米の教師は苦しい言い訳でもするかなーーーこんな風に:「xxxxの長い言葉の歴史があり、だから発音には二種類があって、オフンもオフトンも両方が正当に正しいのです。「t」を発音しないオフンが、日本の英語の授業で好んで行われているようだが、オフトンも正式なんだよ」と。
③
いやそれとも、あくまでオフトンの方が正規の発音だと、メンツに掛けて教師は「言い張るかな?」と、一部の生徒は対抗意識を持った。
④
いやそれだけではない。時刻表から一分も遅れずやって来る列車を見ても分かる通り、日本人は正義感が強く、きっちり白黒の決着を付けたがる。オフトンとオフンの違いの対決は、我が国の語学教育の根幹を揺るがす大問題となり得る。いち語学学校だけの問題ではないぞ!
⑤
「教師は発音の間違いを素直に認めて、授業料を返せ!」と凄む生徒だってあり得る。
⑥
生徒の中には女性もいたから、プライドの高い大英帝国の教師が「ついにメンツを失う」と、ハラハラした。何せ奥眼でハンサムだったからーーー。
文章で書けばとても長いが、日本人は頭が良いから生徒達は①~⑥の全てを、瞬時に思い巡らせた。教師は、さあどうする? 日本人を敵を回して勝てるかーーー!?という状況に陥ったのである。
果たせるかなーーー、流石に英国人教師だけの事はあった。少しも慌てずポーカーフェイスの無表情をそのままに、「貴方がたは幸せである、二つ勉強出来て。はい、オフトン!」
この回答を誰も予想してなかった。むしろ生徒達はマイナス思考で、小さな争いを想定して「不幸の底」に居た。だのに、「君たちは幸せである!」と応じたからまるで正反対で、ここに第一級の「可笑しみ」がある。
次に「二つ勉強出来て」の言葉で、見事!背負い投げ一本を食わされた: 「世の(誰も知らないオフトンという)新知識を、追加の月謝無しに、ただで余分に一つ勉強出来たのだから、なんて「お得で」幸せな生徒だよ、君たちは」、の意味になるからである。
いや、彼の功績はそれだけに留まらない:答えは「正と誤」の外に「三つ目がある」のを指摘して、物事の見方を一変させたからだ。今も思い出して、ユーモアに感心するのである。




