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オフトン(2)
同じように気になったからか、生徒の一人が「先生、オフトンじゃなくてオフンではないのでしょうか?」と日本語で恐る恐る訊いた。
そうなのだ、学校では(私も含めて)、「Often」の中で「t」を発音しないのだと教えられていたからである。私も内心で彼を支持した。
ただ、質問の口調は遠慮がちだった。天下の英国人に(お前は正式な英語を知らぬのではないか)と批判するようなものだから、周りは一瞬固唾を呑んだ。
不穏な空気を察したが、英国人はニヤリと一瞥をくれ、すかさず日本語で応じた:
「貴方がたは幸せである、二つ勉強出来て。はい、オフトン!」
ユーモアに感心し、私は声を立てて笑った。
この時私が奇妙に感じたのは、外に誰一人笑わなかったから。という訳で、今回のテーマは「なぜ誰も笑わなかったか?」の解明である。




