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確かに不思議や

3.確かに不思議や


 先に触れた通り、ウチの製品の平均販売単価がセットで百万円以上する。もっと昔は、セットで三百万円程度だった。正直に言って、誰にでも出来る仕事ではなく、商売としてこれを売って行くのは、テクも要りかなり難しい。


 ウチの成功の(或いは、私が気安く売る)様子を眺めて、何人かのいい年をした親戚の人や知り合いから「自分にも売らせてくれ・自分を採用してくれ」と頼まれた事がある。

 が、私はことごとく断って来た。断る時点で多少気まずい思いをするけれども、これは大きな親切だ。アイツに出来るんだから、オレにもボロ儲けのチャンスをーーーと錯覚するようだが、「アイツだからこそ出来る」とは考えない。自分も100mを10秒切って走れると考えているのと同じだから、世の中を甘く見過ぎている。


 彼らが失敗して、その後の親戚づきあいが悪くなったり、折角の友人を失うのが、分かっていたからだ。言い換えれば、数百万円の商品を売るのは「ソレホドまでに」難しい。


 以前に書いた(=「販売方程式の解法」:亀が空を飛ぶ方法)が、こんな体験がある:

 今の会社を創業する前まで、私はある小さな会社の営業マンであった。この種の製品でトップセールスとして腕を鳴らし、リンリン音をさせたもの。当時セットで三百万円。私は次々に売った。この様子を眺めて、親しくしていた販売店の人(=安井さん:営業の世界で経験が長いが、人を決して褒めないという欠点がある)が、私をこうクサした:


「そんな高いもんが次々売れるちゅうのは、確かに不思議や。いや、実は少しも不思議やない、アンタにはソレしか無いからやーーー」


 外に生きる道がないから、売るのに「死に物狂い」の状況へ追い込まれるからだ、という意味。言葉を変えると「バカの一つ覚え」。「ソレしか無いからや!」は、急所を突いていると今でも私は思っている。人は自分の意志一つで「死に物狂い」になるのはなかなか難しいもので、選択の余地の無い窮地に追い込まれて、「初めて」そうなれるようだ。100の能力が130に発揮される。だから、三百万円の商品が売れる。大抵の人は100の能力があっても、精々70~80程度しか出していない。だから売れない。




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