太っ腹な会社
4.太っ腹な会社
仕方なく、全国規模でネットで協力工場を探索した。この点今の時代は確かに便利。
東大阪地区に腕の良さそうな鉄工所を見つけた。7~8名の会社で堺市の辺りかしら、あの辺りにはいい人が居る。図面をメールで見せて電話で話をすると、神戸の西端にあるウチの会社まで責任者が飛んで来た。「ウチは、何でも出来まっせ。そんな特殊な材料なんて、普段からやってますのんや、お茶の子さいさい。やりましょうや」となった。会社のサイズの割に、言うことが頼もしい。
製造の技術を評価するためにも、最新鋭の試作品を作らせる事となった。
他方でカタログと製造面を含めて社内がそんな中途半端な状態であるのに、辛抱たまらんで先走った九州地区の営業マンH君が、早や注文を取ってきてしまった! 普段から何でも取る男だ。
震動の激しいプレス機を製造しているメーカーからで、普段からナットが緩んで困るんだと言う。M56とM64のサイズを合わせて五点、七十五万円の受注となった。(試用して性能が良かったら)今後も続けて買いたいと言うから、ウチの現状を知らぬとはいえ、太っ腹な会社があるものだ。
突っ端の注文が作った事のない大サイズからのスタートだから、大いに慌てた。M64と言えば直径が6.4センチのボルトだから、大きなナットになる。まあ、相手もそれだけ「困っている」状況なのだろうーーー。何とか作り上げて、一週間前に納入した。数をそれぞれのサイズで余分に作っていて、出荷前に性能テストを念入りにやったから品質に自信はあるが、冷や汗をかいた。




