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バレンタインのチョコ

10.バレンタインのチョコ


「お蔭様で、私は一度も働いた事はないのよ。今まで養って呉れたから、そこは主人に感謝していて、昨日はバレンタインデーだったから、お礼にチョコレートをプレゼントしたわ」

「へえ、そりゃあ、良かったね。じゃ、今でも夜は抱いて貰ってるのかい?」


「いいえ、家はすぐ近くだけれど、別々の家に住んでいるのーーー。チョコレートを渡すために、昨日は主人の家を訪問したのよ」

 家が二つもあるから資産家だ。


「ーーーもう十年ほど前になるかしら。夜主人と私が二階のベッドに一緒に入って居たら、セミダブルなのよーーー」と、いてもいないのにお婆さんはそんな話をした。

「セミダブルは、二人にはちょっと狭いねえ」と、私。


「姑さんが、もう二年前に亡くなったんだけれど、いきなり寝室に入ってきて点灯したわ。貴方は階下したで寝なさい!と言われたーーー。それ以来、主人と一緒にベッドで寝ることは無いわ」

「ヘエッ! そりゃ、酷い姑さんだ。寝室に鍵を掛けてなかったのかい?」


「昔の家だから、鍵なんて元々ないのよ。それに、私も昔の人間だから、アレは何か後ろめたくて汚い事のように思えてねえーーー、そう思わない?」

「そんな事、ないよ! 夫婦はもともと、セックスしたくて結婚したようなもんだ。それは立派な行事で尊敬してもいい位なもんだよ。幾つになっても、遠慮なんかする事ないさ」

「ーーーー」


「私たち(=複数を使って、素早く協同組合を作るような気分になった)に先は長くはないんだ。今夜にでも、早速ご主人の寝室へ行って、抱いて貰いなさいよ。チョコを上げる位だから、嫌いじゃないんでしょ? 歳が行くと自然に寂しくなるもんだ。愛し合うのは若い時より大切だよ」

「男の人は歳が行くと、アレが出来ないみたいーーー」


「その為にバイアグラっていう便利なのがある。試したら、これがよく効く。でも、もし出来なくても、触ったり抱き合うだけでも、二人で幸せな気分になれると思うね」


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