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宿命
8.宿命
配偶者の難病の話に戻るが、考えように拠れば、不治の病で孤独に苦しむ不幸は、彼女一人だけではないかも知れない。そもそも(貴方も私も含めて)「歳を取り・衰え行く」老化自体が、生涯決して治る見込みの無い不治の病に罹っているのと同じ。効く薬も治療法も無い「(絶望的な)難病」である。
幸い痛みや激しい頭痛こそ無くても、老人は誰でも身近に迫る自分の死を何時も意識して生きている。年寄りが孤独感を感じるのは、知人・友達が減るという事の前に、私の配偶者と同じように、難病に掛かっているせいなんだと思う。
歳がいっても「異性を求め」続けるなんて、若い人には想像が出来ないかも知れない。もう繁殖年齢は過ぎているから。けれども、老化という難病の「孤独感・寂寥感」がそうさせているのだと知れば、若い人も納得が行くのではあるまいか。
そんな訳で、冒頭のK子さんが言うようには、つまり「もう達観した境地の筈」にはなれないのが、老人の宿命のようだ。カシオポがこんな辺りの問題に触れていないのは、片手落ちと思う。だから代わりに、このように私が触れておきたい。




