独り者を「殺す」
6.独り者を「殺す」
これを切っ掛けに、私も少し変わった。他人の「孤独感・寂しさ」を少しは理解するようになったからだ。これがクセになり、若い人(特に若い女性:20~50)に接する時にも、そんな気分を意識してしまう。そうなると、若い人にも「孤独感や寂しさが存在する」のに気付くようになった。
若い人のそれは、老人性とは質が違う: 彼氏が出来ない・自分は(男にもてるほどには)美しくない・異性が振り向いてくれない・XXXの試験に合格しない、などである。(先の「ブンちゃんの話」のように)飛び切り上等の美人であっても、「寂しさ」が何処かにあるようだ。気後れがして、男は美人を敬遠するからだ。
美人の本人にすれば「もっと人から見て欲しいのにーーー」と、「寂しさ」も贅沢な部類になる。だから、決して触りはしないが、私は彼女の踊るしなやかなダンスを「(熱心・積極的に)見て上げている」のだ。ピリオドまで配偶者の話に耳を傾けるのと根本は同じ。結果としてバレンタインのチョコを呉れて、彼女は私へ感謝した。
以前に、バレエを踊る女性アールグレイ(三十歳)の少し長い話(「67になってもーーー」(第一話))を書いたが、彼女も大都会に一人暮らす孤独感を訴えた事があった。それらが寂しさや孤独感だとは、若い本人たちは案外気付かない。ちょっと気持ちが「マイナスだな・落ち込んでいるな・(友達が結婚して)自分が焦っているな」、の程度の感覚だ。若い人のそんな寂しさや孤独感に、(本人がソレと気付くより先に)私が「気付く」ようになった。
「その時から」であるーーー、実を言うと私が女に「持てるようになった」のは。私が相手に少しは「寄り添える」ようになったからだと思う。
私の母親がそうであったように、年がいってからのパートナーの存在の有無は、(仮にくっついてセックスをしなくても)人生の幸・不幸に大きな要素だと気が付いた。「孤独感が薄らぐ」効果があるというだけの理由で、人は結婚すべきだと私は考えている。寒い冬の日、「あんまり寒いので、危うく結婚しそうになった」(=暖かみを求めて誰かと抱き合いたい)というのを誰かが言っていたーーー。
ペットを飼うのは愛玩のためだろうが、無意識にその人が孤独を感じているからではないか? 飼うことによって老人が「生きがい」を取り戻すという話を何処かで読んだことがある。統計的にも、独身の人は夫婦者より長生きが出来ないと言われるけれども、これは孤独感が独り者を「殺している」という気がする。




