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◎第四十八話: 「もてるようになった」話

◎第四十八話:「もてるようになった」話


1.太宰治が好き


 この歳(75)になって、私は若い女性(=20~50歳)にもてるようになった。そう言うと人は「突飛な考えを思いつくのはいい、が、証拠を示せ」と言うに決まっている。困ったものだ。

 あくまで主観的なものと認めざるを得ないが、振り返って生涯で今の時期が一番よく持てている。嬉しい事だ。


 週二で通っているスポーツジム・アクトスには若い女性が多い。六割程度が女性会員。みな美しくなりたいのだろう。無論全員と私が知り合いである筈はなく、その中でごく限られた数人だけだが、親しくしている。彼女たちにモテるお陰で少なくとも一年は寿命が延びるに違いない。一年もあれば会社の業績を一割はアップさせられるし、特許だって取れるし、バレンタインデーのチョコも一回余分に貰える。


 最初はこちらから話しかけるけれども、一旦顔見知りになると、次回は向こうから積極的に寄って来てくれる。中にジム所属のインストラクターも複数いる。彼女達とのおしゃべりが過ぎて、その日予定していた私のスイミングの時間に食い込み、結局泳がずに帰宅する事も何度かある。帰宅して「なぜ水着が濡れていないの?」と配偶者から不審がられて、大いに困惑する。


 インストラクターにK子さんがいる。26歳の独身。スラリと背が高くて美人という訳には行かないが、飾り気のない性格で話していると楽しい。私を気に入ってくれて、親しくなった。機械バイクを私が漕ぎながらの立ち話で、太宰治が好きだと聞いた。それじゃ、「平仮名の他に、漢字も読めるんだね」と言って、私の書いたエッセーを「読んでみてくれ」となり、次の週に一篇を渡してみた。



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