満足げに深呼吸する
6.満足げに深呼吸する
とは言え、愛を燃やす為に特に薪をくべたり努力らしい事を「何もしなくても」、現実には二人の関係が長く壊れず、或いは生涯続く夫婦は世の中に沢山いる。内心は別にして多数の夫婦が、浮気や不倫とは「無関係に」生きている。一見、健全だ。
けれども、これは果たして本当に歳月が二人の情愛を育んだ結果だろうか、と私は時々疑う。何か、例えば浮気などの事件を敢えて起すのが二人共「面倒くさい」からと、長年放置する「ズボラ」の結果に過ぎない場合も沢山あると思うのだが、どうだろうか? たまたまチャンスが無かった為に、浮気が起きなかっただけ。
年を経た夫婦の多くがパートナーの方へアゴをしゃくって、「お互いに、空気みたいな関係なんだよなーーー」と云って憚らない。驚くなかれ、そう言って満足気に深呼吸までやって見せる! ズボラが、ついには二人の間に「空気のような」無味無臭の関係を生む。が、これは余り褒められた結果ではない。
考えて見給え、私達は生身の人間であって決して空気ではない。歳月を経ても、それなりの手間を払い相手に働き掛け続け、互いに話題の途切れない対等な男と女の生( なま)な関係でありたいものだーー、と私は願っている。
夫婦の情愛は年月を掛けて自然に育まれ・湧いてくるものと思い勝ちだが、毎回そうとも限らない。カビやバクテリアではないからだ。「楽しもうと思えば」、小さな旅行でも旅行業者へ足を運んで予約を入れたり、或いは自分でネットで調べる手間が要る。ちょっとした旅行でさえそうなのだから、「夫婦である事を楽しもう」とするなら、当たり前だが、手間が要る。
金を稼ぎ生きて行く事が一つの技術であるのと同じく、「夫婦である事」も空気ではなく技術であると思う。配偶者も貴方の事を完全に理解してくれる訳ではない。仲が良くても、誰と一緒に暮らそうが、生きてゆく上で避けて通れない軋みはあるものだ。パーフェクトな人は居ない。
お口にチャックし、時には嘘も交えてーーー、なに、「騙す」のではなく「言う必要が無い」だけであり、全てを話し合えばよいわけではない。可能ならば「経済互角制」というお金も積極的に道具に使い、ベッドテクの向上や相手への愛撫も工夫すべきで、これらを「創り出す」のが、大人の技術と私は信じている。




