天国は死後の世界ではない
2.天国は死後の世界ではない
先のS社の派遣技術者達は同じ「非正規」でも高級な部類なのだろうが、一般的に言えば「非正規」の収入は不利。ウチには、事務職・修理・出荷・営業・設計担当ーーーと、零細企業の割には一通りの職種が揃っている。そんな処から、仕事の内容と給与の相場というのが、私にはある程度ピンと来る。
「非正規」の給与の低さを、時々関係者から聞いてびっくりする事がある(一般に正社員の六割程度と言われる)。出世することは無いし、賞与も無い処が多い。経済的に恵まれないから、家を持つ事は愚か、結婚も難しい。結婚しても教育費を考えると子供を作るのに躊躇( ためら)から、将来に明るい展望を持ち難い。
現代版「貧乏物語」でワーキングプア、これが全国労働者の40%弱というのは、社会として実に不幸な数字だ。
凶悪な事件を起こした犯人が法廷で薄ら笑いしながら、うそぶいたと聞く:「まともな職は無い・金は無い・家も無いし、友達も、養う家族も無い。失って困るものなど、自分には何一つありはしない(さっさと死刑にしてくれ)」 恐ろしい言葉だ。社会の最底辺に堕ちている。
無論、無職の人や非正規の人達が、犯罪を起こすとまでは言わない。けれども、正社員に比べると、「起こしやすい素地」があるのは確か。
これに比べれば、賞与は必ず貰え、有給休暇もたっぷり取れて堂々と欠勤に食い込む人もいる位だから、ウチの社員達(=全員が正社員)の職場環境は、実に手厚い保護下にある。楽しくて嬉しくて、キャッ・キャッ!に違いないから、ウチに限って天国は死後の世界ではない。
お返しに、美人の女事務員なんか、正義の経営者の私の肩を揉むなど、もっと親切にしてくれても良さそうなものだ。普通なら、パート(非正規)扱いされても、全くおかしくないのだからなーーー。本人に、この自覚の無いのが嘆かわしい。




