◎第四十二話: 「非正規」の話
◎第四十二話:「非正規」の話
1.憎んでいる
大学の同窓のA君に単刀直入に訊かれた: 「お前は右翼か、左翼か?」
右翼と言えば騒々しい街頭宣伝の黒い車を思い出して嫌だ。が、左翼と言えばスー・チーさんかも知れないが、これは国の民主化には効き目があっても、国を富ます経済運営の面で力量があるかどうかとなると、ちょっと迷う処。
老人達に対して「甘えるな!」などと、きついことを書いた覚えがあるから、この辺りを根に持って、A君が先の質問をしたのかも知れない。
勝ち組と負け組みがいる、と言われる。生活の経済格差で、具体的に言えば年収の違い。同じ社会に生きる者として、勝ち組・負け組のような対比の仕方は、余り気持ちの良いものではない。しかも、格差は年々広がっていると聞く。金持ちでも貧乏人でもない中間層が減少しているため、であるらしい。
「勝ち・負け」の現象が、社会における「派遣・臨時・非正規社員」(=以下まとめて、非正規と言う)数の増加に無縁でないのは、大して考えなくても判る。「非正規」の割合は、今や全労働者の約四割弱、驚くべき率だと思わないでしょうか!? 二人に一人に迫ろうという勢いだから、私の感覚で言えば腰が抜ける話だ。
働き方が会社に縛られないから、自分はむしろ「非正規」の方が好きだという例外的な少数民族も、実際には居る。が、これはアマゾン河の住人として別に置く。それ以外の「非正規」の多くは正社員になりたいが、なれないから止む無く「非正規」のままなのだろうと、私は推測している。その前提で話をする。
人に能力の差があるのは、人それぞれ顔が違うように、仕方が無い。能力に応じて経済的な格差(=給料や収入の違い)が生じるのも仕方が無いと思う。努力する者が恵まれ、サボる人が報われないのは、公平だと思う。この意味で、確かに私は左翼ではない。けれども、「非正規」の人が扱われる不公平さは、「人の能力・努力」の外にあるから、私はこれを憎んでいる。




