ツヤツヤしい目的
5.ツヤツヤしい目的
作家の坂口安吾は孤独について、こう書いている:「人は最も激しい孤独感に襲われたとき、最も好色になることを(自分は)知った」と。
孤独に陥る時、人は「暖かいもの」に触れたくなるのではあるまいか。それが「人の肌」なのだろう。孤独感がもっと強い時には、「触れる」程度ではぬくもりがなお足りず、中へ埋もれてしまう程の暖かみを求めて、人を抱きしめたく(又は、抱き締められたく)なる。それを好色と安吾は表現したが、深い孤独に陥る時、人は慰めの本当の意味を知るに違いない。人肌の接触無しに、人は上手く生きられなのかも知れない。
老人が孤独だとしても、それは子や家族の責任ではない。 安吾の言葉に従って、孤独を温めてやる為に若い嫁が老人を抱き締めてやる訳にも行くまいから。となればーー、老人は問題の方程式を自分で解く以外に無い。
「して貰う」という受身の立場から一歩踏み出すなら、方程式の解法はさほど難しくはない:即ち先の90歳老人の「女性を求む」の投書は、正解の一つを示している。求めているのは男友達ではないし、もう中学生ではないのだから、単刀直入に言えば、「求めている」のは肌を触れ合うセックスフレンド(=セフレ)。
定年退職後に「健康の為にXXXをやる」、という冒頭の健康指向の話に戻る。
それじゃ、「健康の為に、女友達を作る」と何故考えないか?である。そうなれば、日課としてやっているスポーツジムでのバイクこぎの運動や水泳の練習も、健康の為という無味乾燥な理由の外に、ツヤツヤしい目的が出来ることになる。愛し合う為に、下半身を鍛えるというピンク色の目的も出来る訳だ。
男なら、なに心配する事はない、バイアグラとレビトラさえ有れば、死ぬまで大丈夫と近所の医者が保証していた。医者はヤブだが私より年上だから、言葉は信ずるに足る。もし疑っても、少なくとも彼の歳までは大丈夫、という保証にはなる。素敵で、恐らく最も有意義な老人の個人資産840兆円の使い道が、ここにある。
口説く為にたぶらかしのメールを女へ送るとなれば、あれこれ知恵を働かせて書くから活性化された脳はボケる暇がない。人との触れ合いは、ボランテイア活動の比でなく、「密着」する位。冒頭の 「体・脳・人との触れ合い」の三大栄養素の問題が、セフレで一挙に解決。先に述べた安吾の言う通り、何せ中へ埋もれる程「分かち合える人」になるのだから、「孤独感」の問題も片付く。




