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魔法使い

++++私以外のセールスマン七~八名全員が、正反対だったからです。D製品の販売割合が最も「数少なかった」。もっと正確に言えば、殆どの人がゼロに近かった。そうなると、確かに奇妙。


5.魔法使い


 実は「奇妙」なのは、Dばかりを売る私の方であって、Dを売らない他の人達が正常:

 何故なら、例えば一番安いA製品に比べて、D製品の機能は1.2倍優れているが、価格は1.8倍と「割高」な点です。更にDが不利なのは、一番高額なE製品に比べると、Dの機能は70%と劣るくせに、価格は同じと来ている。また、Dの重さが格別軽量と言う訳でもない。


 だからD製品は、他の機種に比べて「割高」で機能も「割り損」。誰が考えても買われる道理の無い機種だから、販売数が一番少なくて当然。Dを買いたい顧客は、(私以外のセールスマン達に言わせると)「バカ以外は居ない」し、「売るのは計り知れないほど面倒」となる。

外資資系の会社で、全世界に支店や代理店を有していましたが、どこの国の人も考える事は同じらしく、どの国でもD製品は売れない。だから、ついに米国の工場もDの生産を止めようと、心積もりしていました。


実はD製品は会社が試しに作ってみた機種で、構造が複雑で製造コストも掛かり過ぎて、利益率(儲け)も低いものだった。カタログに載せたものの、会社として余り売って欲しくない機種で、開発失敗品。会議に同席していた米国人の会長も、非難めいた調子で訝しがった:


「何故君は、Dばかり売るんだ? お前は世界中の営業マンの中で、一番数多くのDを売っているんだぞ! おかしなヤツだ」と、バッサリ切り捨てた。「最も売り難い製品を、最も数多く売る」私を、会長も他の社員らも全員が疑い、魔法使いを見るような目で眺めた。


 じゃ、私の方ではどう思っていたか? これは全く逆:

「五種類の中で、Dこそ一番売り易い製品だ」と、思っていた。本当なのだ。だから、なぜ他の人達にDが売れないのか、解せない。疑われて私は声を挙げて反論したかった:「みんな、一体何を言うんだ。こんなに売りやすい製品は、外に無い。見てご覧よ! 私の場合、Dの数が一番沢山売れてるじゃないか!これが何よりの証明じゃないか!」


 けれども、よう口に出せかった。他の人達の言うのが、理屈として正しいと「自分でも」そう感じたからです。何となくこっちの旗色が悪い。

「私一人だけに何故D製品ばかり売れるのか」、原因として数々の容疑者が検討されたが、全員が納得せず議論が紛糾した。結局、誰にも理由を解明出来なかった。単なる偶然の一致か、それとも何かトップセールスと因果関係があるのか無いのか? 私も含めて皆が頭を悩ませた。


 「これからは精々(儲けの薄い)Dを売ってくれるな」と、とうとう会長からとどめを刺された。「お前はおかしい」という結論となったが、私も訳が分らない。この時点で、正しい解答が判る読者が何人いるだろうか? 分るなら偉い!と思う。




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