爪楊枝
13.爪楊枝
元々男の容貌は不調和。表情が薄らぼんやりしていて、薄暗い処でさえ、目の錯覚でキリッと見えるという事はない。はっきり言えば、醜男の部類。しかも、性格にルーズな面があったから、美と几帳面さに敏感な女には、本来もてるタイプではない。
が、反対にこう言えるかも知れない:そんなハンデがあるからこそ、これを補う為に言語能力が極めて発達し、セールストークに長けるようになり、終にセールスマンになったのだ。
こと女の話になると、普段のルーズさを手早く片付けて、俄然「超マメ」な人間へ変身して、実にマメマメしく働く。女を口説くのに、他の男達のようにすぐ「くたびれたり・諦めたり」を絶対にしない。顔の不調和を補って余りある柔らかい舌を持っていたから、引っ掛かりの無い滑らかな物言いで、女を気分良く揉みほぐす。揉みほぐされて、女は筋肉と骨をばらばらにされるのだ。
これを読んだだけで、「キャッ、私もバラバラにされてみたい、私って肩凝りがひどいのよ!」と女性の読者なら言うかもしれない。が、要注なのは、ばらばらどころか、最後には溶解して液体にされてしまう危険があるから、元の形へ組み直せなくなる。ここはひとつ読むだけで我慢しておいた方が得だ。
女を口説くのも顧客を口説くのも、実は基本が同じ。その証拠にトップセールスマンで、同時に女を口説くのが下手な人なんて聞いたことが無い。彼はソレだった。私ーーー? 昔、確かにトップセールスではあった。ウフフ、やってみたら案外上手く女を「揉みほぐせる」かも知れない。
先の、キン蹴りキックで 「キャン!」と言わされた販売店の奥さん一人の例外を除いて、「狙って落ちなかった女は居ない」と彼はいつも豪語していた。「人妻の方が味がよいーーー」と、通らしく爪楊枝でせせりながら言った。これを聞いて、そんなに味がいいなら「その内に試食してみよう」と、こっちも思った位だ。
序でながら、私だけが知っているのはもったいないから、男から直接教わった「女を落とす」コツを伝授して置こう。彼は私へこう教えてくれた:
「女を口説くのは簡単ですよ。決して紳士的なアプローチである必要はありません。いやむしろそれは最悪の方法。かと言って、長たらしい愛の囁きでもないんです。盛り上って「相手が大笑い」した一瞬を逃さない事です。この時すかさず、自信に満ちてたった一言こう言えばよい:『ねえ君、今夜寝てみない!?』
「笑った時こそ、快感物質のエンドルフィンというホルモンが脳内に放出されて、この瞬間、女に無防備なスキが出来るのさ。そこへさっと滑り込めば、独身も人妻もインテリ女も99%落ちる。落ちないのは、もはや女ではない!」




