◎第三十四話: 「ワーキング・ラク」の話
◎第三十四話: 「ワーキング・ラク」の話
1. 軽トラで回る魚屋
世の中には、様々な製品・商品がある。小はちり紙一枚から、大は乗用車や船一隻もそう。河原に転がっている石ころでさえ、庭石として商品になる。売り物でなくても、小学生が作る紙飛行機も製品。商う品(=商品)の字の如く、世の中、その気になれば「売れないものは無い」。
だから難しく考えなくても、もし会社を興して何かを売って儲けようと思えば、商品は到る所に存在する。何も無理して、例えば、ドイツから輸入しなくても構わない。
ウチは販売会社(=以下、販社と言う)。メーカーではないから、仕入れて転売が仕事。先に述べた通り「売れないものは無い」のだから、売ろうと思えば「何だって」売って構わない。製造設備も要らず気楽な商売だけに、経営なんて何でも無さそうに見えて、実際何でもない。
それが証拠に、販社の数は国内に無限に思えるほど多い。大は三井物産みたいな大商社、小は近所を軽トラで回る魚屋さん。
(ウチが属する)工業製品の分野だけに限っても、販社(所謂、工具屋)は、少なくとも国内に千社以上はある。ウチの同業者だ。その内の二百社程度は、ウチでも名前は聞いた事があって、その中の幾つかとは実際に取引をしたりもしている。そこへ「卸し」をしたり、逆に(転売目的で)こっちが「仕入れ」たりもする。
そんな二百社を眺めての話だが、潰れる販社は多い。私が長生きしているからこそ分るが、20~30年のスパンで眺めると、三分の一から半数は消えてしまうようだ。