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◎第三十二話: 人肌の話

◎第三十二話: 人肌の話


1.久美子ちゃん


 先日中学校三年五組のクラス会があった。参加者が十名で、男女半々。無論同じ歳だから、全員が六十七。その中で昔同じ町内だったD久美子ちゃんと、懐かしい話が弾んだ。彼女は、その半年ほど前に脳溢血で夫を亡くしていた。夫が入院していた時の介護の話に及んで、彼女がこんな話を漏らした:

「見舞いに行くと、夫が私の手や体を、ひどく触りたがったわーーー」

 

 見舞いに病院へ出掛ける位だから、少なくも憎みあっている夫婦ではなかった訳だ。けれども、先の彼女の言葉には、べたべた触られたくない、やや大げさに言えば、「イヤラシイ・気持ちが悪い」という響きが感じられた。そこで:

「ふ~ん。でも、どうして触らせて上げなかったんだいーーー? 仲が悪かった訳じゃないんだろ?」

「ーーーー?」

「ーーーー?」

「触らせて上げたらよかったかしらーーー? そう思う?」


 私は死ぬ間際の母親の様子を思い出した(第六話:「細くなったねえ」の話)。ベッドに寝た母親が掛布団の下から片手を差し出した。それはゆっくり、そろりとしていた。骨と皮ばかりで割りばしのように細く、しみだらけで茶色に見えた。私は両手で包み、「細くなったねえーーー」と言った。



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