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このように泳げ!

++++海に落ちって必死で泳いでいるだけ。そうして毎日泳いでいる内に、身に付き慣れて、むしろ泳ぎが自動的に易々と出来るようになっている。だから、十則を眺め回しても少しも感動する処が無かったのだ。


4.このように泳げ!


 私が若い時分に、実際にそれが実行出来なかったのは事実。じゃ、私の何が変わったのか? 変わったのは私の「立場」、即ち「海に転落した事」だ。「鬼十則」は電通の社長が、言わば海に落ちて溺れまいとして必死にやった「泳ぎっぷり」を、そのまま記述したのと同じ。


 「お前たち、このように泳げ! 何故ならワシが「溺れまいとして」今このように死にもの狂いで泳いでおるのだから。真似をせよ」と、経営者が社員に突きつけている。けれども、これには無理があるーーー。海に落ちたのは社員ではない。社員は落ちずに、陸からそれを眺めている立場。二者の間に、意識や行動にすれ違いが起きるのは当然なのだ。


 会社の浮沈を背負って、潰れたら夜逃げしかないと逃げ道を塞がれている経営者の立場(=だから、給料が高い)と、潰れたら転職すればよい立場の社員とでは、考え方が違う。 「鬼十則」は社員に「心中を求める」ようなもので、経営者の「独りよがり」。これに気が付いて、私は憮然たる気持ちになったが、手品のタネとはこれである。


 勿論、世の中には 「鬼十則」を実行出来る稀な資質の社員も、数は少なくても居るに違いない。事実それに近いタイプの先輩を、私はサラリーマン時代に見た事がある。そんな人を偉いと思う。けれども残念ながら、そんな優れた人達の中に過去の私が属していなかった、のだけは確かである。


 一部の優れた人は別にして普通は、初めに十則ありき、ではないと思う。私が良い例で、十則を実行したから今の立場になったのではない。会社の上司が部下に訓示を垂れる時に、先のような「心中を求めるような」間違いを起こしやすい。


 本当は逆で、上司になりその立場になったからこそ、鬼十則が出来るように「成らざるを得なかった」のだ。校長先生になったから、立場上恥ずかしくない行動を取らざるを得なくなり、繰り返す内に身に付き、(案外意に反して)結果的に「人格者になってしまった」訳だ。若い時に人格者だったから、校長になれた訳ではあるまい。


電通の社長も含めてこんな勘違いを人は起こし易いが、地位や立場は「人を変える」。出来なかった人間を 「出来る人間」に昇華させる処がある。




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