個人的な趣味
++++社内外の経済評論家からは「近年会社の考えが柔軟になった・優しくなった・いや、一層厳しくなった・鬼も蛇も居なくなった」の噂が、錯綜している。
9.個人的な趣味
売上額は八割に減少した。処がであるーーー、経費などを差し引いた最終の会社の利益額(儲け)は、反対に向上したのだ。未だある、残業を含めて一人当たり社員の労働時間が、8~9時間だったのが全員定時に帰宅出来るようになった。本当を言や、ヒマにさえなった。
要するに売上額が減少した分、社員の仕事量が減るから残業は皆無となる。ローカル営業所が減った分大きな経費が浮き、浮いた分が社員の給料・賞与へ回るようになり、相対的に増加した。
「利益を出し続け・生き残る事」は会社にとって第一に必要だが、その為に一般には(或いは、経営の常識として)売上高を競い・会社の規模の拡大を目指して、アニマルみたいに「競争的・攻撃的」となる。けれども女の意見は違った:
「どうして「競争して・夜中まで残業・規模拡大」してまで稼がなくてはならないの? それでは、稼いだ金を使う時間さえ無い! 20人の社員を5万人へ拡大する必要はない。例えば、会社のサイズが十倍になったからといって、社員の給与が十倍になる訳ではない。5万人となれば、社員の顔を覚えられないわ」
「「競争とか、生き残るとか、攻撃するとか」で悲壮な顔をするのは、戦争の大好きな男の考え。人類は男が女を巡って競争するように進化してきたから、気の毒な事にそんなクセが身にしみ付いている。卵子は貴重だから女が男を強く選り好みする結果で、女獲得競争なのよ。
でも、男は勘違いしているーーー、会社やビジネスは卵子獲得とは違うわ」
「利益さえ出せばよい」のなら、事は簡単。(男が考えるみたいに)「規模を拡大させなくても」出来る筈だと、女は気楽に考えた: 販売数を必ずしも増加させなくても、製品を(売る代わりに)レンタルをしても良いではないのか、と思いついた。レンタルなら、レンタル終了後に製品が戻ってくるから、丸儲け。実行したら丸儲けとなった。
なにもかもを、自分一人でやらなければならない理由は無い。近所にプール付きのジムが存在するなら、プール付の自宅を建てなくても構わないじゃないかというのと同じ。拡大主義は会社の為(或いは、社員の為)というよりも、半分以上経営者の「個人的な趣味よ」、と言って彼女は憚らない。




