カフェで夕食
++++処方箋の限度が六十五なのは、それ以上になると毒入りの味噌汁を呑み過ぎてもう手遅れか、或いは、既に三年短縮されて亡くなられたお方で、これを読む機会が無いからだ。
3.カフェで夕食
私の自宅は、閑静な住宅地の中。地下鉄の西神中央駅まで、歩いて十三分。駅前に「そごうデパート」が在る。住宅地のそばにデパートが空高くそびえ建ってあるのもヘンだろうが、我が国土は広いから、探せばそんな処もある。
序に言えば、味で有名なトンカツ屋の和幸もデパートの近所で、時々持ち帰りで「特ヘレカツ大」を買う。毎朝コレを三つに切って、一切れづつをサンドイッチにして紅茶付きで食べるのが、私の朝食。
四日目には無くなるから、又この店へ寄る。私が好意を寄せている三十過ぎの彼女が、店員として働いている。今のところ女の示す好意と言えば、トンカツに添えるキャベツのサラダを一袋を内緒で余分におまけして呉れる位なもので、未だこっちの軍門に下ってはいない。が、なに、彼女のツッパリも時間の問題。
話を不倫から本題へ戻す: 夕方月に一度くらいの割で、先のデパートの三階にあるカフェへ、散歩がてら配偶者と二人で出かける。夕食。途中人目が無くとも、手は繋がない事にしている。ウチの近所は油断がならない、犬か猫が見ているからだ。
カフェでの夕食はオシャレ:「サンドイッチ・グラタン・サラダ・コーヒー」のセットを注文し、一人前980円。二人とも、同じこれ。カフェだから、いくら「俺様は億万長者」と威張ってみても、これ以上のメニューは望めない。
昼間は、デパートへ買い物に来る中年女性達がランチに寄るカフェだが、「デパート内・小奇麗・見た目豪華なメニュー・安い」というだけで女性に人気の店。念の為に、目下六十七と古びてはいても、私の配偶者も女性なので、人気に例外を作らず、この店が好き。
カフェに満足出来ず、精の付くビフテキかトンカツを食いたいと下品なメニューを要求するのは、未熟な夫。これで精を付けて先のD君みたいに「やろうよ」となると、乱闘事件の再発となる。そうでなくても、濡れ落ち葉と嫌われる定年退職後の身分だから、女へ不満を述べるのは決して得策ではない。恨みは何処ででも買う。
男が早死しない為には、女に嫌われないのが一番。「夕食はカフェにしよう」と言われれば、こっちは口答えをしない。むしろ1ケ月も前から、980円のセットを待ち焦がれていた風を装う位。とはいえ、この質素なメニューの夕食が実際には、長生きと健康には好いようだ。




