◎第二十七話: 「ダンディーな人生」の話
◎第二十七話: 「ダンディーな人生」の話
1.突っ張る
ダンディーという言葉がある。「男くさい」とか「男らしい」と言い換えられるだろうか。「男くさい」というと、何やら動物的で女を垂らしこみそうな臭いになるので、今回は精神性を重んじて、後者の「男らしい」の方を選択する。
けれども、所謂「男らしく」なるのは、私にはなかなか難しいようだ。服装からしてもセンスがあるとは言えずパッとしないから、まず外面では失格な気がする。
次に目に見えない内面ときたら、クヨクヨと細かい事に拘り、極度の神経質と心配性で、例えば冷蔵庫の扉を閉めた時に、庫内の照明が「確実に消灯されたかどうか」電気代が気になって、夜も眠れなくなるーーータイプの人間である。ネクラの代名詞みたいなもので、精神科医の言葉を借りればパラノイアと言うらしい。
心配症が昂じてここ何年も睡眠薬を常用している。そうしないと眠れない。薬物で無理矢理寝込まされるせいか、夜中によくうなされる。見る夢は大抵、追いかけられて殺されそうになりながら、辛うじて生き延びるスリラーものが多い。慣れるとヒヤヒヤするシーンも楽しみの一つとは言え、これでは到底「男らしい」からは程遠い。
「男らしい」とは、外面は兎も角「竹を割ったようにさっぱりした性格で、じめつかず、豪放磊落で、女なんか大嫌い(な振りをする?)ーーー」となるのかと思う。何となく格好くて勇ましい。若い頃は「そんな人に私もなりたい」と思い、自身のネクラで神経質な性格を卑下し、治すべく人知れず努力した。猫背なくせに、試しに「ガハハーー」と格好を付けて磊落に笑って見せた。
そんな健気な苦心に対して、ある日「アンタ、なに突っ張ってんのよ!」とガールフレンドから、かって経験したことのない激烈は批判を浴びた。「なんかツンツンしている」と思っていたら、初めからモテてなかったのだ。結局振られた。ショックで、仕方なく突っ張りを外したら屁が出て、空気が抜けたみたいになって、元の木阿弥に戻った。




