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踏んだり蹴ったり

++++外面( そとづら)だけで、「アソコは、(社員がよく辞めるから)ブラック企業だ」とか言うのは、実情を知らぬというもの。


3.踏んだり蹴ったり


 人材という面で元々不利な小企業が大手に伍して行くには、それなりの知恵がいる。大手と同じ事をやっていては、当たり前にやられてしまい、世間という運動場から消えてしまう事になる。だからと言って、大手と違う事として給料は(大手より)安くして当然ーーーというのは間違っている。「零細な会社・安い給与・残業多し」では、従業員は踏んだり蹴ったりになるじゃないか!


 小さいからこそだが、従業員が「誇り」を持てるような経営をしないといけない。私は常々そう考えている。けれども「皆の者、誇りを持て!」だけではダメで、扱う製品の品質を高く保持する必要もあるし、社会への貢献度の向上、従業員の給料を(世間に比べて)高目にするのも大切なポイントである。易しい事ではないが、そういう目的を達する為には「鬼か蛇か」と言われる位は何でもない。

 けれども同時に、従業員へは「会社である限り、ここは仲良しこよしの幼稚園ではない」と、叱咤もする。私はどちらの側に対しても、フェアに考える事にしている。


 一般に気が付かないが、もう一つお金を掛けずに「誇り」を持たせる方法があるのをご存じだろうか?一般の会社ではこれを研修というが、要するに「勉強させる」のだ。誇りを持たせるのにもっとも有効である。勉強には成果を問う試験も必要で、二つセットでコンビ。


 セットになったウチの試験問題は、従業員の務めとしての「製品知識や技術知識」だけに留まらず、「一般常識・販売店との付き合い方・人の説得方法・クレームの電話を受けたら第一声はどう応じるか」から始まり、お茶の入れ方、文章の書き方、梱包の仕方、ホッチキスの留め方などもある。問題集は現在1200問に達していて、年々増加中。


 「勉強せよ」とは決して言わない。代わりに(勉強せずに)先の試験の平均得点が90点を下回れば、「次回の賞与は二割レスだよ」というだけ。試験は1200問から選ばれて、10問づつ定期的に毎週一回行われる。これはルール。因みに、従業員達の平均得点は98点を超える。

 社員は誰でも、これが定年まで付いて回り、付いて来れない人は自然に辞めてしまう。数ケ月に一度全社が集まっての新製品の勉強会や、外部の講師を呼んでの研修、その後で打ち上げ式で一杯ーーー,どころではない。


 入って数年の管理部所属のA君は、前職がトラックの運転手であった。社内の勉強のお陰で、現在では一流企業の技術部の人を相手に、日ごろ電話で互角で議論して一歩も引けを取らない。相手はトラックの運転手と話しているとは夢にも思っていない。

 女事務員のBさんは、電話一本で百万円程度の注文を一人でまとめられる。お客へ指示を出す事もあり説得も出来るからだ。客は「この女は、何故か何でも知っているーーー、まるで自分の母親みたいだ」と錯覚する。

 彼ら二人が、日ごろから「誇り」を持たいでか! 


 自分に対し絶対的な「自信と誇り」を持つーーー、今の時代それは腕力ではなく、知識であり勉強以外には無い。これが従業員の実力を高め「人材」へと変化させ、大手に伍す方法となる。大手の彼らは(立派な大学を出て以来)案外勉強していないもので、ウサギが亀に追い抜かされてしまう。 


 なお、今回次男が選んだ採用決定者は、幸か不幸か、妻帯者。キワモノではないだけに、面白味も無いかもしれない。1200問にしごかれて、ゆくゆくどう育つか楽しみにしている。


比呂よし



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