男の寡黙
2.男の寡黙
女に比べて、一般に男は口の重い人が多い。人類進化の歴史が関係していると読んだ事がある。太古の昔、マンモス狩りが男の主たる任務だったから、大声でしゃべっていては獲物を取り逃がしてしまう。
しかし寡黙だからと言って、男が女よりも決して上等な訳ではない。確かな事の一つは、断じて男は下等で獣( けだもの)だという事実だ。というのも、聞いているのは殆ど上の空だが、女のおしゃべりの最中に男が考えているのはこんな事:
大抵はぼけっと何も考えていないのだが、これは男が無能の証だ。無理に思考するとすれば、自分が男だからこそよく判るが、このおしゃべり女を裸にすればどんなオッパイをしているのかなとか、今日のパンツは何色かな、と良からぬ妄想を逞しくする程度。寡黙で助兵衛な男より、おしゃべり女の方が明るくて、人間として余程健全な高級品だと思う。だから私が女を好きなんだろう。
男はそんな助兵衛な生き物だが、天然自然に寡黙にしていると、しゃべらないというだけで、女から見れば「怒っている」風に見えて、「有罪」のレッテルを貼られてしまう。時々そう指摘されるから、「いや、そんな事はない、何も怒ってやしないよ」と弁明しても、女は信用しない。「いや、ヒーチャン(=恥ずかしながら私の名)は怒っているに違いない!」と決め付けられてしまう。
自信有り気にそう言われると、案外そんなものかなと、こっちもそんな気になって怒りたくなる。 夫婦関係の維持の為に、それではいけないから誤解を解こうとして、仕方なく女の話の途中で、アーとかウーとか相槌の積もりで、一言二言有り合わせの言語を発してサービスに努める。「怒ってないよ」の意思表示の積もりで、眼だけで笑う練習もやった。そんな様子に安堵して、女は一層勢いを増しておしゃべりになる。
これが一般的な女の特徴であり、男の対策である。