飛び級
++++小・零細企業は劣化した(?)人材の「吹き溜まり」となっている。裁判所を含めて多くの人が知るまいが、悩ましい現実である。
5.飛び級
鍛錬されているから、少々の事ではこっちも驚かなくなる。そんな中で、ある印象深かったケースを紹介する:
「定年退職後のエンジニア」を雇いたいと思って募集した。高給を払わなくてもよいから、人件費を抑えられる。年齢は不問にした。製品を試験したり検査をする業務で、仕事量は多くはなく精々一人前の六割程度しかないから、体力的に楽だ。(会社が存続する限り)恒久的だから、そんな人が長期に要る。午前中だけ出勤でもよいし、週3日のフルタイムでも構わない。給料は月十万円とした。
となればーーー当然、応募は暇を持て余している定年退職者後の人となる。難しい試験はせず、履歴・経歴書と面接だけで、決めようと考えた。予想通り何人かの所謂「年寄り」からの応募があり、面接を実施した。
私がやっている「製品開発の仕事」も手伝って貰いたいという気持ちがあったから、エンジニアならまるきり誰でも良いとは行かず、決めかねながら半月が経った。
十六日目に三十三の男から応募があった。彼は募集要項の(安い)給料額の欄を見間違えたなーーーと反射的に思った。100万円と間違えたか? 慌て者に違いない。履歴・職歴書を見ると、国立大学の理系を出て、一流大手企業M重工の技術部研究室に数年の職歴がある。そうそうたるキャリアだ。
小学校から順に記載している学歴欄を眺めていて、何か規定より年数が足りないのに気付いた: 驚いた事に、成績が超優秀で大学も含めて彼は学年を「飛び級!」している。だから就学年数が人より短い。過去の応募者には例の無いケースだ。
若いけれども、親の介護か何か、恐らく週に三日程度しか働けない特別な事情でもあるのかーーー。まあよい、それほど優秀なら、ウチで研究開発の仕事に専念させて、給料を特別に再考しても構わない。兎に角面接をやろうと考えた。




