突っ込みを入れる
++++700万円がパアになるかどうかの瀬戸際だから、面接時にこっちは「真剣」である。対する応募者は、仮に不採用になっても、また他社を当たれば良いだけだから、気楽なものだ。
2.突っ込みを入れる
こっちが切り込むような鋭い質問を浴びせても、都合が悪いのか相手は目を逸らせ、あらぬ方向を眺めて険悪な事態を避けようとする。生あくびをかみ殺した声で、ロクでもない返事を返す。そんな時は血走った眼でにらみ付け、勢い余って相手を叱り飛ばしたり、命をおびやかすことも度々ある。
会社にとって面接は、かくも真剣勝負なのだが、問題はそんな応募者の中から良否をどうやって「見抜くか」、である。
(営業マンではなく)単に英語の出来る人を求めるなら、事は簡単。TOEICテストで○○○点以上の人を雇えばよい。設計マンなら、材料力学のテストをして試しに図面を描かせて見れば判る。けれども、営業マンとなると、これほど適性の判定が難しいものはない。まず「人はウソをつく」からだ。つき方も、図に乗って勢い侮るべからざるものがあり、こっちは騙されてしまう。学校では「ウソをつくな」と教えないのかしら?
「前職の商社(=一流企業)で十年の営業経験があります」と、キャリアを自慢げに披露する応募者もいる。これは往々にして、「本人の売り上げ成績が極端に悪かったから、十年目についに前職の会社が我慢出来なくなって、会社から放り出された人」なのである。中年以上の男に多い。
迂闊にこういうのを掴むと手痛い目に遭う。実際、雇ってから太い馬脚を現わしたので、こりゃ大失敗だと思って解雇したところが、裁判沙汰となり最高裁まで争って、結局ウチが敗訴した経験がある。
三十代の男の面接でこん風に言ったのも居る:
「前職の会社で売り上げトップで、社長表彰を二度も受けました!」
これを聴くと、「じゃ、どうしてそこの社長は貴方を手放したの?」と、つい突っ込みを入れたくなる。適度なウソと不道徳のお陰で、世の中が円滑に回っているとは思うが、面接試験ではこれが邪魔になる。




