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恋だって芽生える(最終回)

14.恋だって芽生える(最終回)


 アラフォーシングル女性の約四割が非正規で、そして非正規の七割近くが低年収で250万円に満たない。彼女たちに対する支援は手薄で、時代と制度のはざまに生きている(最近の日本経済新聞から)。

母子家庭でなくても、勤勉で性格も良く能力もありながら、ただ顔が少し魅力的でないというだけで、心ならずもシングルで定年まで働き通した女性を、私は身近に知っている。が、彼女のキャリアと年期に対して、(女というだけで)給料の余りの低さを聞いて驚いた事がある。


 学校ではパーフェクトに男・女に差別はなく、女子の生徒会長だっているから、そんな世の中だと信じて育って来る。国際大会やオリンピックで女性選手の華やかな活躍振りを眺めていると、つい錯覚を起こしてしまう。

 けれども、本当は一旦卒業して社会に出るとーーー、社会は女に対して決して甘くはない。「大変不利」な仕組みになっていて、そこに女の生徒会長は存在しない。先に述べた通りのシングル女性の厳しい現実が、それを証明している。


 飢え死にする訳じゃないからという声もある。が、ここはアマゾンの奥地ではないから、電気・水道代は要るし、アパートの家賃を値切る訳にもゆくまい。文明の世に生まれて文明を享受出来ない「最低辺の暮し」は、みじめだし誰だってしたくはない。


 我国の個人金融資産の総額は約1200兆円とされている。これは良いとして、驚くなかれ、その80%以上を六十歳以上の年寄りが保有している。超高齢化社会の到来で、老人の割合が増加している(=2013年の65歳以上の人は全人口の25.1%)とは言え、社会の富が高齢層へ「偏在」しているのが分かる。先の短い老人が、金を持って一体何処へ行こうって言うのか! 行政の力でも、いかんともしがたい歪な社会構造だ。


「仕方が無い!」だって? いいや、行政に頼らなくても仕方はある筈さ。

 先に「(若い女性とつきあえるようになって)年寄りにもおこぼれが回って来た!」と冗談めかして書いた。 が、これは実は決して冗談ではないーーー。考えても考えなくてもお分かりだろうが、先のようなハンデのあるシングルの女性へ、80%の富を握る年寄り達が「手を貸してやって」、一体どんなバチが当たろうや! むしろ老人としての義務である位に、私は考えている。


 こういう話はえてして、「お前は金の力で、都合よく自分の浮気心と助兵衛根性の言い訳をしようとしている」という風に取られ勝ちだ。が、そんなケチな料簡で、書いても仕方がないのだ。むしろ時代に合わせて「老若の垣根を取り払った・新しい男女関係」の構築こそが、本稿の意図するところ。シングルの女も年寄りも、もっと自由な発想を持ってはどうか。結婚詐欺より余程ましと言いたいのだ。


 若い(=六十前位の意味)シングル女性の困窮を中心に書いたけれども、そんなお付き合いで(お返しに)年寄りの生活が生き生きとなるなら、老人にとっても願ってもない生き甲斐になる筈だ。その意味では、五分と五分。一歩譲って(老人が狡く)利用されたって構わないではないか、残したところで冥土に持ってゆけるわけでなし。


 今の時代、道具としてネットは必需品。もし「(歳だから)ワシは、メールやスマホなどようせん」などと言っていては、もはや生きる価値が無いというもの。新しい時代の到来を、目を三角にして年寄りが堅苦しく批判ばかりしていてはいけない。正義感を振り回してどうする。

 女性は何時の時代でも、概して受け身というもの。むしろ年寄りの方から、そこへ積極的に一員として参加して行くべきだ。暇を持て余して山登りで熊と友達になるより、もっと人と接触しよう。


 「老・若」の付き合いには、「誠を尽くし、いたわりの心を持って接する」という大村智(ノーベル賞学者)の言葉が、日経新聞の「私の履歴書」欄に載っていた。その通りだ。なあに、これは「男・女」間でも便利に使える言葉。(アールグレイのバレエの女の話のように)パトロンの立場になって若い女へ資金援助している内に、間違って恋だって芽生える事もある。それは又それで楽しいではないか。


比呂よし

2017.10改訂




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